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敏洋’s 昭和の恋物語り

青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(八) 

2023年12月31日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 生まれてこのかた、女と名のつく人種との会話といえば母親ぐらいの彼だった。 幼児期は「人見しりのはげしい子でして」。 小学生時代には「恥ずかしがり屋さんでこまりますわ」。 中学に入ると「愛想のない子でして」。
 そして高校時代に、ゆいいつ訪れた機会をうしなってしまった。通学時にバスが同じになる女子生徒が声をかけてきた。ただ単に「おはよう!」という声かけだった。「おはよう」なり「ああ…」とかえすだけでも良かったのだが、とつぜんのことに頭が真っ白になり、返事をすることもなく横をむいてしまった。
彼としては悪口雑言をあびせたわけでもなく、すこしの邪険な態度をとっただけじゃないかと思っていた。しかし女子生徒にとっては、衆人環視のなかで受けた屈辱でありいたたまれないものだった。わっと泣き出してその場にうずくまってしまった。以来、彼に声をかける女子生徒はいなくなった。
“なんだよ、なんだよ、なんなんだよ。そんなオーバーに泣くことないだろうが” 後悔の気持ちがわいてはきたが、「この間はごめん」とひと言あやまればすんだことなのに、彼ときたら。「いよっ、色男!」。級友のからかうことばに、真っ赤になってしまった。
(無視しちゃえ、むし。彼ならきっと……)

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