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敏洋’s 昭和の恋物語り

[宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!  (三十七) 

2023年12月29日 外部ブログ記事
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(佐々木小次郎 四)
 小倉屋に逗留のあいだも、毎朝に夜明け前から鍛錬にはげむムサシだった。庭にはおおきな池があり、悠然とおよぐ錦鯉が数十匹はいた。紅白の模様がそれぞれにおもむきがあり、当主ごじまんの錦鯉も数匹いると手代からきかされた。「おほめになられると、夕げにはひと品がふえますですよ」と耳打ちをしていく。しかしそれができるムサシならば、もうすでにどこかの藩に召し抱えられているはずだった。
 大声を発しながらの素振りで、重さが三貫はあろうかという太い木剣が上段から振りおろされるたびに「ブォン、ブォン」と空気を切りさくにぶい音がする。桜がいいというお内儀は「桜ははかない。商家にはむかない。長寿と繁栄をあらわす松の木にしましょう」と、おおきく枝がはった松の木が植えられている。「木を傷めませぬように」と釘をさす番頭には、剣術における日々の鍛錬の大切さはわからぬものよと、内心でこぼしながらも「あいわかった」と答えるしかないムサシだった。
逗留して三日目に、番頭が声をかけてきた。「いかがですかな? 佐々木小次郎さまを倒せば、ムサシさまを剣術指南役として迎え入れる藩がございます。その藩名は申し上げられませんが、小倉藩とは犬猿の仲でございまして。まいとし指南役同士の試合がございますが、小次郎さまが御指南役になられて以降、一度として勝てぬのでございます。そこで小次郎さまを倒せるお方をお探しなのですが」
 ムサシの中に逡巡する気持ちがあった。もう少し歩を進めれば長崎に辿り着く。和尚に言われた南蛮人が多数いる地に着く。
――諦めるか。しかし南蛮の言葉など、とんと分からぬ。村と同じように馬鹿にされるのではないだろうか。さらにまた、ここで逃げては、日の本一だと宣することができなくなる――――女々しいぞ、ムサシ。無念の死をとげられたあの方の名をいただいたからには、その思いに応えねばならぬ――
 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、と勝負にでた。これで死すとも已むなし、と腹を固めた。

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