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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第三部〜 (四百一) 

2023年12月12日 外部ブログ記事
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 なにかを言わねば、慰めのことばをかけなければ。“勝子ねえさんだったらどういうだろう、どうお慰めするだろう”。思えばおもうほど、考えればかんがえるほど、ことばが逃げていってしまう。“社長、しゃちょう。お姫さまのところへ戻ってきてください。信じてらっしゃいますよ、小夜子奥さまは”。やはり祈るだけしかできない竹田だった。
「社長はねえ、つねづね言ってらっしゃった。『小夜子に勝る宝物はねえよ。おれがこんなに女ごときに惚れちまうとは、思いもよらねえことだぜ』ってね。小夜子奥さまに会わずに逝かれることはありません、ぜったいにね。いや、あっちゃならねえことです。戻られますって、ねえ。今日だって、『武士坊ちゃんにおもちゃを買うんだ』って、そう言って出られたんですよ」 五平のことばに意を強くした竹田もまた、「そうでした、おもちゃです」とつづけた。
「そう、そうなの。なんで百貨店なんかに、そう思ってたけど、またおもちゃなの?もういっぱいなのよ、足の踏み場もないくらいなのに。またおもちゃ? 武蔵らしいわね。あたしのときもそうだった。もういらないっていうのに、鞄だ、靴だ、帽子だって。そうなのよね、武蔵は愛情表現がへたなのよね。お金をつかうことばっかり考えて」
 気持ちが落ちついてきた小夜子だった。愛情表現がへただと言い切った小夜子だが、己自身にも当てはまると思う小夜子だった。“そういえば、あたしも武蔵に、はっきりと自分の気持ちをつたえてなかったわ”“だめだめだめよ、あなた。あたしにも言わせて、しあわせよって” はじめて、武蔵ではなく、おじさんではなく、「あなた」ということばをつかった小夜子だった。
「竹田。なんで、なんでなの? なんで刺されなくちゃいけなかったの!」 疑問の問いかけが、さいごには怒りのことばに変わった。「だれなの、犯人は。目星ぐらいはついてるんでしょ! そりゃねえ、あこぎな商売をしてるのはわかってる。まともな商売なら、こんなにあたしに贅沢なんかさせられないわよ。近所でもうわさにのぼってるのは、あたしにだってわかるわよ。でも、殺されかけるほどのことなの? 商売上なら商売で勝負しなさいよ!」
「そのとおりです。小夜子さん(お姫さま)のおっしゃるとおりだ(です)」。五平と竹田のことばがかぶさった。「あなたたちって、似たもの同士なの? おんなじことを言って。竹田。あなた、もうすこし気の利いたことはいえないの? そんなじゃ、お嫁さんの来てがないわよ」 小夜子から手きびしいしっぺがでた。しかし竹田はうれしかった。“それでこそおひめさまだ”と、こころの中でつぶやいた。

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