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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第三部〜 (三百九十七) 

2023年11月14日 外部ブログ記事
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「大杉商店でしたか、日の本商会は。あそことは、因縁がありますなあ。社長の口ぐるまに乗せられて」と、五平が言ったところで。「おいおい、人聞きの悪いことをいうなよ」と、武蔵が苦笑いをする。「いやこりゃ言い過ぎだ。社長はわるくない。詐欺にはひっかかるし、しまいには番頭の持ち逃げときた。まったくハゲタカばかりですなあ、世の中。うちも気をつけなくちゃ」 くわばらくわばらとばかりに、背広を頭にかぶせる仕草をする五平に「うちも、富士商会もハゲタカっていわれてるんだぞ。もっとも、そのハゲタカも気をつけなくちゃ他のハゲタカにやられかねんがな」と、相づちを打つ武蔵だった。
「しかしなあ。あの大杉商店も、結局は店をたたんでたろうさ。生き馬の目を抜くっていわれるこのご時世に、あの人の好さはいただけねえ。老舗だってことで取引先も『悪いことはしねえだろう、暴利はとらねえだろう』ってことでつながってたんだ。それが証拠に、うちが持ちかけた取引にはほいほいと食いついてきたじゃねえか。誠意だけじゃ、飯はくえねえってことさ。それに、人が10人いれば10の理屈があるってことさ。10の国があれば10の正義が存在するってことさ」
「まあそういうことでしょうな。しかし番頭がしっかりしてりゃ、主人がだめでも持ちやすがね」 ふたりだけになった社長室で、恒例の酒盛りがはじまった。 ゆったりと足を伸ばして、ふたりとも素の顔を見せあった。「そうそう、そういうことだ。富士商会も、五平という番頭がしっかりしているから、大丈夫ってわけだ」「やめてくださいよ、社長には勝てませんて。あたしはただ、社長がいつもいうように汗をかくだけですよ」 「知恵があるものは知恵を出せ。ちえがないものは汗を出せ。あせを出せない者は去れ。ってやつか?だれのことばだっけかな? しかしこれは、けだし名言だぜ」
(井原西鶴のことばだといわれています。松下幸之助さんのことばはこうです。「まず汗を出せ、汗の中から知恵を出せ、それができない者は去れ」その本意は、知恵がないときには汗を出して、行動・努力で答えを導き出せということらしいです)
 大きく手をのばして背伸びをした武蔵に、思いだしたように五平が口をひらいた。「10人の正義・理屈ですか。あれもまた、名言ですなあ。しかし詐欺といったらいいすぎですが、一歩手前でしたぜ。ああわかってたよ。だから慎重にやったんだ、ことばじりをつかまえられちゃたまらんからな。ましかし、楽なもんだった」「不良品の選別料を差し引いた特価品なので、次回からは通常価格でいきますよ」 買い入れたメーカーの話を伝えなかったことに、五平が「社長、大丈夫なんですかい」と疑念の声をあげたが「うちだってすべての商品の検査はするんだ。調べねえほうがわるいや」と強弁した。
「まあな。メーカーにしたって、作りたくて不良品を作ってるわけじゃねえ。一定定量の不良品はかくごしてるんだと。でその不良品外しに、たかい給料を払ってまで調べてなさるんだ。そこで俺っチの出番よ。安い手間賃で調べますんで。その分をこちらにいただきたいと、少し色をつけてな。それに万が一の不良品の責任はとらせてもらいますから、ということなんだ。俺にしたって、あちらさんに入ってるとは言ってねえかもしれねえが、うちじゃ検査してますよ、とは言ったんだ。それをどうとるかは、向こうさま次第だよ」

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