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敏洋’s 昭和の恋物語り

青春群像 ご め ん ね…… (十七) 

2023年10月15日 外部ブログ記事
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手紙(二)
 新一くん、元気ですか。
 突然にこんな手紙が届いて、さぞかしびっくりしただろうね。考えに考えたあげくのことなんだ。きみにだけは、ぼくの気持ちを分かっていて欲しくて。母さんに話しても、多分泣くだけだろうと思うんだ。いや、本音を言えば、母さんには知られずにいたいと思う。こんな弱いぼくだなんて、絶対に知られたくない。お願いだ、新一くん。母さんには内緒にしていて欲しい。
 覚えているかい? もちろん覚えているよね、あのへび女のこと。あの件で、唯一の親友だったきみを失ってしまったんだ。きみのひと言はこたえたよ。そんな風に考えていたなんて、ぼくにはほんとに思いもかけぬことだったから。いちじはね、きみを憎んだりしたんだ。きみ、なんて言ったか、覚えてる? 案外、覚えていないかもね。「ぼく、帰る。こんなの、やっぱり変だよ」って、怒ったように言ったんだ。そしてさっさとひとりで帰ってしまったんだぜ。分かる? そのときのぼくの気持ち。自分の馬鹿さかげんに腹を立てていたんだ。冷静に考えれば、へび女なんて存在しないことぐらい、すぐに分かりそうなものなのに。
 いや分かっていたのかも、案外に。きみと別れる淋しさが、あんな行動を起こさせたのかもしれない。
(ぼくが先に帰ったのではない。友人がさっさと帰ったのだ。「こんなことありえない」。そうなん度も呟きながら、友人は一人で帰ったのだ。友人は右のこぶしで左の手のひらを何度もなんども叩いていたひとり人取りのこ残されたぼくは、ただ呆然と立ちつくすだけだった。そのときのこころ細さは、強風のさ中に断崖絶壁に立たされたような恐怖心にも似ていた。ときおり見せていた友人の冷酷さを、あのときほど思いしらさられたことはない)
 中学時代、虚無感におそわれていたぼくでした。父親の浮気問題で家庭がこわれちゃっててね。なぜ父親が家をでるほどのことになってしまったのかは、ぼくには分からない。たしかに口論をしている場面にであったことはあるけれど、ボクが居ることに気がつくと、両親はすぐに互いにそっぽをむいてしまっていた。
 それなのにだよ。食卓にね、何日も帰ってこない父さんの分まで用意する母さんなんだ。そして毎晩、ぼくに「お父さんはね、あなたを捨てたの」って、言うんだ。「あなたが悪い子だから、帰って来ないのよ」って言うんだ。毎晩毎晩、言われつづけたんだ。
 でね、ベッドに入るとね、ぼくにね、もうひとりのぼくが言うんだ。「お前は父さんだけじゃなくて、母さんにも捨てられたんだ。悪い子は、みんなに捨てられるんだ」 何もかもが灰色に見えて、信じられるものがなくて…。いやそうじゃない。灰色とか何色とか、そんな色すら感じていなかった。そんなぼくだった。

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