メニュー
最新の記事
-
[宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (四十) -
愛の横顔 〜100万本のバラ〜 (二十五) -
水たまりの中の青空 〜第三部〜 (四百六) -
ポエム 焦燥編 (誰か、救いを!) -
青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(十)
テーマ
カレンダー
月別
- 2024年01 月( 16 )
- 2023年12 月( 33 )
- 2023年11 月( 33 )
- 2023年10 月( 30 )
- 2023年09 月( 25 )
- 2023年08 月( 29 )
- 2023年07 月( 35 )
- 2023年06 月( 39 )
- 2023年05 月( 41 )
- 2023年04 月( 31 )
- 2023年03 月( 33 )
- 2023年02 月( 27 )
- 2023年01 月( 26 )
- 2022年12 月( 16 )
- 2022年11 月( 14 )
- 2022年10 月( 14 )
- 2022年09 月( 3 )
- 2022年07 月( 16 )
- 2022年06 月( 20 )
- 2022年05 月( 23 )
- 2022年04 月( 21 )
- 2022年03 月( 25 )
- 2022年02 月( 17 )
- 2022年01 月( 22 )
- 2021年12 月( 24 )
- 2021年11 月( 20 )
- 2021年10 月( 22 )
- 2021年09 月( 19 )
- 2021年08 月( 11 )
- 2021年07 月( 4 )
- 2021年06 月( 22 )
- 2021年05 月( 25 )
- 2021年04 月( 21 )
- 2021年03 月( 23 )
- 2021年02 月( 22 )
- 2021年01 月( 21 )
- 2020年12 月( 23 )
- 2020年11 月( 23 )
- 2020年10 月( 23 )
- 2020年09 月( 20 )
- 2020年08 月( 27 )
- 2020年07 月( 31 )
- 2020年06 月( 32 )
- 2020年05 月( 33 )
- 2020年04 月( 22 )
- 2020年03 月( 15 )
- 2020年02 月( 10 )
- 2020年01 月( 9 )
- 2019年12 月( 15 )
- 2019年11 月( 17 )
- 2019年10 月( 14 )
- 2019年09 月( 13 )
- 2019年08 月( 11 )
- 2019年07 月( 13 )
- 2019年06 月( 14 )
- 2019年05 月( 10 )
- 2019年04 月( 10 )
- 2019年03 月( 10 )
- 2019年02 月( 9 )
- 2019年01 月( 8 )
- 2018年12 月( 16 )
- 2018年11 月( 12 )
- 2018年10 月( 9 )
- 2018年09 月( 17 )
- 2018年08 月( 16 )
- 2018年07 月( 15 )
- 2018年06 月( 10 )
- 2018年05 月( 9 )
- 2018年04 月( 6 )
- 2018年03 月( 4 )
- 2018年02 月( 5 )
- 2018年01 月( 14 )
- 2017年12 月( 7 )
- 2017年11 月( 4 )
- 2017年10 月( 5 )
- 2017年09 月( 3 )
- 2017年08 月( 4 )
- 2017年07 月( 4 )
- 2017年06 月( 4 )
- 2017年05 月( 5 )
- 2017年04 月( 6 )
- 2017年03 月( 3 )
- 2017年02 月( 1 )
- 2017年01 月( 8 )
- 2016年12 月( 19 )
- 2016年11 月( 22 )
- 2016年10 月( 26 )
- 2016年09 月( 23 )
- 2016年08 月( 14 )
- 2016年07 月( 29 )
- 2016年06 月( 18 )
- 2016年05 月( 14 )
- 2016年04 月( 32 )
- 2016年03 月( 29 )
- 2016年02 月( 34 )
- 2016年01 月( 38 )
- 2015年12 月( 25 )
- 2015年11 月( 26 )
- 2015年10 月( 35 )
- 2015年09 月( 27 )
- 2015年08 月( 28 )
- 2015年07 月( 35 )
- 2015年06 月( 33 )
- 2015年05 月( 33 )
- 2015年04 月( 36 )
- 2015年03 月( 55 )
- 2015年02 月( 29 )
敏洋’s 昭和の恋物語り
水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百九十二)
2023年10月10日
テーマ:テーマ無し
そよそよと多摩川の川べりから風が吹いてくる。きらびやかなネオンサインが焦がす空を、はるかに見ながらふたりして並んでいる。電柱にとりつけてある街灯にむらがる虫が、他の客だ。「どうです、いけるでしょ?」「うん、美味い! と言うのは、失礼か? 仮にもプロの作るものだ、うまいのは当たり前だな。俺たちに合ってるな、この味は。五平にしちゃ、上出来の所を見つけたな」
熱々のおでんを口にはこびながら、コップ酒を手にする。五平は、ちびりちびりと舐めるように飲んでいる。おだやかな表情の中に、ときおり見せる苦汁の色。武蔵が、口を開いた。「五平、なにを悩んでいるんだ。話してみてくれ。五平の悩みごとは、俺の問題でもあるんだ。俺たちは、血こそつながっていないが、義兄弟なんだ」 じっと五平の横顔を見ながら、五平の口がひらくのを待った。しばらくの沈黙ののちに、やっと五平の口がひらいた。
「社長……」「五平、タケさんでいいよ。いや、タケさんじゃなきゃだめだ」「だめですわ、それは。社長としての武さんに話したいんです」 五平にしてはめずらしく、気色ばんで言い返した。「そうか、社長としての俺か。わかった、こころして聞くよ」「社長。ここらで、身を退かせてもらいたいんで」「身を退くって、おまえ。会社を辞めるってことか? 冗談言うな、悪いじょうだんだぞ、そいつは。五平には、定年なんかないんだぞ。辞めるのは、いや辞められるのは死んだときだ。馬鹿ばかしい、話にならん、そんなことは」 思いもかけないことばに、五平から目をそらして首をふった。
「社長の気持ちは、ほんとにありがたいと思いますわ。ありがたいんですが、もうダメなんですわ。気持ちがね、切れちまったんです。朝起きて、以前なら『よし、やるぞ!』って思えたのが、今は……ないんです。『もうあさか』って、ため息なんですわ、出るのが」 沈んだ声ながらも、はっきりとした口調でいう五平に「だめだ、だめだ。そんなことは許さんぞ。なあ、五平。五平だから言うけれども、俺なあ、長くないかもしれん」と、声をひそめる武蔵だ。 五平のことばに誘われるように、武蔵もまた、弱よわしくつげた。
「なんです、その長くないってのは。変なことは言わないでくださいな。医者に、なんか言われたんですか?」 思いもかけぬ武蔵の告白をきかされて、己の発したことばに驚きを隠せない五平だ。「ふん。医者は、酒をひかえろのお題目さ。そうじゃない、そんなことじゃない。実は、じつは夢見がわるいんだよ、最近。おむかえの夢を見るんだ。親父とお袋らしきふたり連れがな、むかえに来るんだよ」「らしき…って、どういうことです? いやいや、疲れからですよ。喜びが大きすぎて、それにとまどってるんですよ。坊ちゃんの誕生がね、武さんの気持ちをね、目いっぱい高揚させているんだ。その反動でね、わるい夢を見るんですよ」「まあいい、辛気くさい話はやめだ! とに角、五平の退職は認めんぞ。だめだ、だめだ! 親父、もう一杯だ。五平、お前もからにしろ」
「社長…あたしは……」。くらく沈んだ声で、五平がポツリポツリと話しはじめた。「あたしは、いや、あたしなんかが居ても良いんですかね? 厄介者じゃないかと、そう思えはじめて」「待てまて、なに」。口をはさみかける武蔵を制して、五平がつづけた。「竹田も、いっぱしになってきましたしね。もう、あたしの指示なしでも、なんでもこなせるようになりました。徳子との二人三脚で、経理もきちっとやってますし。その徳子も、あたしなんかより竹田との方がやりやすそうですし。それに最近じゃ、仕入れの方も社長におまかせしっ放しですし。なんだか、あたしの居場所がね、なくなっちまったようで……」「とにかくだめだ。この話は、これで終わりだ。いいな、the end だぞ」
>>元の記事・続きはこちら(外部のサイトに移動します)
この記事はナビトモではコメントを受け付けておりません