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敏洋’s 昭和の恋物語り

[ブルーの住人] 蒼い情熱 〜ブルー・れいでい〜 

2023年04月15日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



(八)黒服
 すこしの間、己の夢想とのあまりの落差に立ちすくんでしまった。 戸惑いの中でも、容赦なく現実がおそいくる。「お客さん。ここでチケットをお求めください。一杯の飲料代も含まれています。追加の場合は、黒服にその旨お伝えください」「えぇっと、それじゃ…。コーラをひとつ……」「ご注文はお席に着かれてからお願いします」
 常連客をよそおおうとした少年。 顔を真っ赤にして、チケットを手にして、キョロキョロと見まわす。少年の心が告げる。“カウンターだ、カウンターの隅っこに行け!”。しかし、少年の足は動かない。 黒服が少年の前に現れた。「お客さん、こちらにどうぞ。お連れさまはいらっしゃいますか?」「い、いえ。こんやは一人です。この間は……」
 以前に友人に連れられて来たのだと言いかけて、ことばが詰まってしまった。初見の客だと見抜かれていることを、認めざるをえない少年だ。そもそもが、二度目三度目が、どうだというのか。つい苦笑いをしてしまう。「申し訳ありませんが、おひとりさまですとカウンター席をお願いしていますが」「いいです、そこで。はしが空いていれば、はじっこでいいです」

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