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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百三十八) 

2023年03月29日 外部ブログ記事
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「タケゾウ!」 突然にすっとんきょうな声を上げて、小夜子が立ち止まった。「どうした? なにか、欲しいものを見つけたか? 約束だから、なんでも買ってやるぞ。小夜子のおかげで商売も順調なことだし」「ここ、ここ、ここに入ってみたい。歌声喫茶、カチューシャですって。カチューシャって、ロシアよ。アーシアの国よ」 目をかがやかせて、武蔵の手を引っぱる。
 昭和30年に、歌声喫茶「カチューシャ」と「灯」の二店が誕生した。店内のお客全員でうたうということが、連帯感を生まれさせてくれる。集団集職で上京してきた若ものたちにとって、さびしさを紛らわせる心のよりどころ的な存在になっていった。「ああ、楽しかった。みんなで歌うって、素敵ね。それに大きく口をあけるのも、こころが開放されるわ。竹田も、そう思わない?」 うっすらと汗をかいている小夜子、十分に満喫している。「はい、そうですね。気持ちいいです。ですが小夜子奥さま、そろそろお帰りにならないと」。陽の落ちた時間が気になる竹田だ。小夜子のお供をおおせつかって、もうふた月が経つ。
 取り引き先のあちこちから引っぱりだこの小夜子は、夜の接待にもかりだされている。当初こそ、ビッグバンドの演奏が聞けると大喜びだった小夜子も、接待の何たるかを知るにつれて不きげんになっていった。しかし他の女子社員たちの目もあって、にこやかな対応をしなければならない。これまでのように、好き勝手はできない。朝の出勤時間も、次第しだいに早くなっていった。いまでは、武蔵と同時刻に出社する。「無理するな、遅くてもかまわんぞ」と武蔵がいっても、「いいの。みんなとわいわいおしゃべりするのが、楽しいから」と、小夜子の意思でしている。さすがに夜の接待の翌日は昼の出社としてはいるのだが、武蔵はふだんどおりに出社していく。「ほんと、タフなのよね。それだけが、とりえかも?」
そんな小夜子だから、竹田のお守り役どきには精一杯の我がままを通す。武蔵からのお墨付きが出ているのをよいことに、五平の苦虫をつぶした顔をしりめにいそいそと出かけていく。「竹田。俺が出張のときは、小夜子の面倒はお前がみてやってくれ。社用でないことにも、お前を使おうとするかもしれんが。いや、使うな。とにかく、小夜子を優先してくれ。専務には、俺からいっておく。どうにも、小夜子は専務とはうまが合わんようだからな。ま、よろしく頼むぞ」「分かりました、小夜子奥さま優先でいきます」 当初こそ小夜子を独占しているとうらやましがれたものだが、小夜子のわがままぶりをみるにつれ、男性社員たちのやきもちの視線はきえた。

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