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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百三十六) 

2023年03月23日 外部ブログ記事
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 久しぶりの武蔵とのお出かけにもかかわらず、きょうの小夜子は不きげんだった。どうにも気ずつなさが取れないでいた。いつもならば武蔵の腕にしがみつく小夜子が、ひとりでさっさと前をいく。三歩下がって云々など、まるで気にもとめない小夜子だ。銀座をかっぽする多くの女性たちも、みな一様に視線をそそいだものだ。ひそひそと陰口をたたかれようとも、小夜子にとっては賛辞以外のなにものでもない。
「小夜子。どうしたんだ、小夜子。きょう今日はえらく不きげんじゃないか。会社で、なにか、あったのか? 専務にいや味でも言われたか? それとも、お腹でもいたいのか?」 からかい半分に声をかけた武蔵に、みけんにしわを寄せて小夜子が答えた。「武蔵がゆっくり過ぎるのよ! 男でしょ、早足で歩きなさいよ!」「おう、そいつは悪かった」。こいつはやぶ蛇だったと小夜子の歩に合わせる。武蔵のこころ遣いが温もりが、じんわりと小夜子を包みはじめる。小夜子の手をいつものように腕にとった武蔵が、小夜子の異変に気づいた。。「小夜子、少し熱があるんじゃないか? 医者を呼ぶか? ここのところ引っ張りまわし過ぎたからな。きょうはこのまま帰ろう」
 小夜子自身も、たしかに熱っぽさを感じてはいる。しかし武蔵が言うほどにおお事ではない。えいっと気を入れればどこかに飛んでいきそうな、その程度の熱だ。このあと、武蔵とのお出かけがいつあるかも分からぬ小夜子には、すこしの疲れなど気にしていられない。「武蔵は、あたしとのお出かけは嫌なの! それとも、お疲れなのかしら? 武蔵も、としをとったものね」。皮肉たっぷりに小夜子が言う。いつもの小夜子が戻もどたと感じる武蔵だが、そういえば……と気になることがないわけではない。ここのところの得意先回りに同行させてしまったことが、少し強行軍だったかと気になってきた。日の本商会の意外な粘りに、武蔵の中にあせりが生まれはじめている。
ひと月ではむりにしてもふた月もおまけ作戦をつづければ音を上げるだろうと高をくくった武蔵だった。しかし意に反して、富士商会と同様のおまけ作戦をとりはじめて、もう三ヶ月になる。消耗戦に入ってしまい、さらには悪いことにたの取引先に知られてしまった。当然ながらおなじ取引条件にしてくれとせめられた。そうなれば武蔵としても、認めざるを得ない。しかも、なぜひとにぎりりの相手だけを優遇したと、より以上の厚遇を要求されている。武蔵が取引先まわりをする羽目になり、小夜子のお披露目もかねてのこととなってしまった。

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