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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百四十三) 

2022年06月09日 外部ブログ記事
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 式後の武蔵は、前にも増して商売に精をだした。持てる財をつかい果たしたということもあるが、それにも増して事業欲がムクムクとわきだしていた。ひとり小夜子を残して会社に立ち戻った武蔵は、「新婚旅行に出かけられるんじゃ?」と言う五平に、「そんなものは、いつでも行けるさ。猛烈に働きたいんだよ、今は。すかんぴんになっちまったことだしな」と、笑った。
 昨年早々のことだ。「社長。東北の名産品あたりを、売してみませんか? 細いながらも伝はありますが」と、進言する五平に対して「いや、まだいい」と、腰を上げなかった。「面白いと思うんですがね。そろそろ嗜好品を取り扱ってもいいんじゃないか、なんて考えたりしているんですが」と、なおも食い下がる五平に「まあ、その内にな」と、にべもない。なぜ東北物を扱わないのか、いや東北地方の話そのものを嫌がるのか、武蔵の心底が分からない五平だ。
 直感的に武蔵の判断で事のぜひを決めることもありはした。商売の流れとして、即断即決を迫られることは珍しいことではない。しかしその後、五平に「どう思う」と声をかけていた。が東北物については、それがない。是ほどまでに頑なな武蔵はついぞ知らない。その武蔵が、「五平、東北の名産品をリストアップしてくれ」と、告げた
「待ってました!」と、すぐさま武蔵の前に資料を出した。「なんだ、おい。手回しがいいな。そう言えば、去年だったか、やいのやいの言ってたな」「今か今かと、待ってました。良いのがあるんです、南部鉄器なんて最高です。鉄瓶やら鍋もですが、風鈴が良いんですわ。リーンってね、高い音がひびくんです。和むんですわ、気持ちが。ダダダ、ドドド、カーン、コーンってね。復興も佳境に入ってますすからね。どっと復員兵も帰ってきましたし、散々にやられた工場なんかも再建できました。殺伐とした時勢も落ち着き始めましたし、そろそろだろうと思ってるんですが。社長の目にはどう映りますか? 仕事から帰って一杯やってる時にですね、リーンなんて、乙なものだと思うんですが」
「家にぶら下げてるのか? で、耳を澄ませてるってわけか? まさか目をつぶってるんじゃないだろうな。ニヤニヤってか……。そんな五平なんて、あんまり見たくねえな」「いやいや、社長。これがまた、いちど試して……。要らねえや、社長には。小夜子さんて言う伴侶がおりなさる。失礼しました。しかしですね、社長。独り身もいますからね、けっこう」「そう言うことだ。五平、お前も所帯を持てよ。しかし、五平の言うことにも一理ありそうだな。どこか当てがあるのか? まわってみるか、いっ丁」

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