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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百三十八) 

2022年05月27日 外部ブログ記事
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 そんな陰口など、どこ吹く風とばかりに「そらそら、お着きじゃ、お着きじゃて。準備は出来とろうな? 村の衆には座ってもらおとるか?」と、声を張り上げる。「もう皆さんには、お座りいただいております。ただ、村長さんがまだお見えじゃ……。」「村長は来ぬ、出張だと。陳情に行って来るとかで、昨日出かけた。むりやり作ったんじゃろう。のお、これから張り合うものじゃから。ま、いい。おらぬ方が、いろいろとの」 頭を畳にこすり付けての初江の報告に、大婆は素っ気ない。繁蔵の目が、初江にあやまっている。“もうちーと、待ってくれ。なあに、婆さまもとしじゃ。長くはないんじゃ”
「さあさあ、皆の衆。お待たせしましたの、ご到着じゃご到着じゃ。さあさあ、祝うてくだされ」 大婆の先導で、武蔵と小夜子が屏風の前に座った。「ほおー!」。一斉に感嘆の声が洩れた。「これは、これは……」「正三坊ちゃんが惚れなさったのも、無理からんことじゃ」「ほんに、ほんに。種が良いと、こうも違うもんか?」
「本日は、、、」 大婆に促されて、武蔵が立ち上がった。“村長選に出る繁蔵のことを頼みますぞ”と、大婆がささやく。「何ですか、聞くところによると、村長が陳情に出かけられたとか。残念です、まことに。どんなことかは分かりませんが、このわたくしに言っていただければと、残念に思います。小夜子の生まれ育った所です。精一杯のことをさせてもらいますから。わたくしの義理の父親であらせられる茂作さんに言ってくだされば結構です。
それから、子どもたちのことです。経済的な苦しさから、上級学校への進学を諦める子はいませんか? ぜひにも、援助させていただきたい。かく言うわたくしも、断念した口でして。何人でもかまいません。五人が十人でも、いや村のお子さん全員でもかまいません。茂作さんのご推薦があれば、喜んで応援させていただきます。すこしでも上の学校に入っていただきたい」
 拍手喝采の鳴り止まぬ中、渋い顔の繁蔵だ。そして、うんうんと頷いていた大婆だったが、繁蔵ではなく茂作の名が出たところで目をむいた。「いや、婿どの。茂作じゃなくて、繁蔵ですわの?」 そんな大婆の声も、割れんばかりの喝采の中に掻き消されてしまう。振舞い酒に酔ってしまったのか、顔を真っ赤にした男が立ち上がった。「茂作さんにですかの? 繁蔵さんではなくて……」 繁蔵の選挙参謀を自認する男が、大婆を見ながら声をあげた。 「ま、言わずもがな、と言うことで。とにかく、茂作さんに言ってもらえれば」 あくまで茂作だけの名前を告げて、繁蔵とは宣しなかった。

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