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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百三十七) 

2022年05月26日 外部ブログ記事
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 式前夜のこと。「お父さん。今まで、ほんとにありがとう。わたしの我がままを通させてくれて。これからは、いっぱい親孝行するから」 目にいっぱいの涙を溜めて、小夜子が言う。「い、いや、そんなことは……。それより小夜子、ほんとにこれで良いのか? 正三じゃなくて、良いのか? まだ間に合うぞ。どうなんじゃ?」「いいのよ」。小夜子がきっぱりと言い放った。「縁がなかったのよ、正三さんとは。お別れはすんでるし」「そうか、そうか。この……わしなんかの為に。すまんのう」「なに言ってるの! わたしは望まれて行くのよ。三国一の花婿さんに望まれて行くのよ」
“そうよ、そうよ。わたしは幸せ者なの。財産すべてを、わたしの為につかい果たすんだから。これからもわたしの好きなようにしていいって、言ってくれたのよ”“みんな褒めてくれてるじゃない、あの婆さまだって。これ以上の良縁はないって、言ってるじゃない。それに、それに、生娘じゃないんだし。アーシアも死んじゃったし……”“良かったのよね、お母さん。タケゾーの元に嫁ぐのは良いことよね。借金も払ってくれたし。それに何より、爺ちゃんの面倒も見てくれるって言うし”“いいの、いいのよ、これで。女は、愛されてナンボなのよ”
 そして式当日。 突き抜けるような青空の下、黒塗りのハイヤーが埃を巻き上げて走っている。ゆっくりとした速度で、竹田の本家へ向かって走っている。神社での式を終えた武蔵が、満面の笑みで車からおりたつ。少し遅れて小夜子が、緊張の面持ちでおりたつ。差し出す武蔵の手をしっかりと握っておりたつ。紅白の幕でかざられた門のまえで待つ本家の大婆が、満足げにうなずいている。
「うんうん、立派なお婿さんじゃて。でかしたの、小夜子。おお、美しい花嫁姿じゃ。うんうん、うんうん」 つづいて、茂作と繁蔵が後続の車からおりた。「婆さま、大丈夫ですかいの? 中で待っておられれば良いのに。ふらつきませんですかの?」 繁蔵が心配げに声をかける。「年寄り扱いするでね!」と、一喝した。かくしゃくとした動きで、武蔵と小夜子を招き入れた。
「ええ婿さんじゃ。のお、小夜子。でかしたぞ、ほんに。お前のおっ母さんにはがっかりさせられたが、小夜子を産み落としたことは認めてやらねばの」“この婆さまが、母ちゃを殺したんだ” 恨みの炎が、小夜子の目に宿る。と共に、ほぼ直角に曲がった腰が、痛々しく小夜子に映る。齢、八十歳を超えたはずの大婆。当主である繁蔵に対してあれこれ指図する様は、一種異様な趣をただよわせる。「隠居しても良かろうに、なんで固執するかのお?」「繁蔵さんではなくて、嫁の方じゃて。初江さんよ」「そうそう。嫁に牛耳られるのが、しゃくなようじゃわ」

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