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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百三十六) 

2022年05月25日 外部ブログ記事
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 ひとみと言う女、年のころは二十代前半か?  痩せぎすの体型が若く見せるきらいがあると考えると、後半かもしれない。顔立ちは、不美人ではないけれど、美人でもない。 正三の知る女性ー小夜子を除けば、年上ばかりだ。源之助の息がかかった女性で、正三の教育係りのようなものだ。痒いところに手が届かんばかりの対応をしてくれる。正三の目線の動きで察知し、口に出すまでもなくことが済む。選民だと意識させられている正三にとっては、実に居心地の良い場所だ。「いいか、正三。我々は選ばれし者なのだ。日本国民を正しい道に導くために選ばれたのだ。ユダヤ民族が選民であるように、我々官吏はお上に選ばれし選民なのだ。その自覚を常に持って行動をしなさい」
 そんな正三を認めない女性ーそれが、小夜子だった。そしてそれが苦痛にならない正三だった。あの再会の日までは。“小夜子さんも、今のぼくをどう見てくれるだろうか? もう一人前の男として、認めてくれるだろうか? 尊敬の眼差しをくれるだろうか? そしてそして、ぼくの伴侶と、意識してくれるだろうか?”それらことごとくが、裏切られた。官吏としての正三は勿論、男としても認めはしない小夜子。どころか、非難の矢が矢継ぎ早に飛んできた。そして除ける間もなく、その矢は正三の胸に突き刺さった。
 しかし今、ひとみという女に出合って、正三の胸に激しく燃えるものが生まれた。正三を見下すわけではなく、といって見上げるわけでもなく、正視するひとみ。「お待たせ〜! 正坊。美智子姉さん、ありがとうございました」 嵯峨美智子ファンだと言う正三に宛がわれた女給は、確かに色気たっぷりではあったが、正三の興は戻らなかった。襟をすこし緩めに着付けている着物姿に、「ほお、色気ムンムンだね」と声をかける者もいたが、正三にはだらしなさとしか映らなかった。
「しょう坊、どうかしたん? 元気ないやん」「そんなことはない」「ウソ! あたしがおらへんかったから、泣いてたんやわ。よしよし、もうどこにも行かんからな」 酔いつぶれたのかと思われていた正三が、突然に身体を起こした。「ひとみ、ひとみ! 何してたんだ? 淋しいなんてものじゃないぞ。ぼくは、生きる気力さえ失ったぞ。だめだ、ひとみと接吻をしないと、ひとみの口を吸わないと、元気がでなーい!」唖然とする一同を後目に、ひとみに圧し掛かっていく正三。「はいはい。しょう坊、みんながびっくりしてるわよ。おいたが過ぎると、お尻ぺんぺんよ」
「坊ちゃん!」と、津田が裏返った声で、言う。「今夜、店がはねた後なんですが、寿司でもお摘みになりませんでしょうか?」「おいおい、声が変だぜ」「いや実は、彼女に今、『ひとみさんと一緒なら良いわ』と言われたものですから」「なんだなんだ、どうした口説き落としせたのか、おい。この野郎が! ひとりで良い思いをするつもりか?」
 小山が噛みつくが、他の者からは声がない。「おいおい、ひょっとして、俺だけか? みんな約束、取り付けたのかよ。美佐江ちゃん、ぼくたちもなんとかなろうよ」 すがるような目を向けるが、「ごめーん。今夜はどうしても、だめなの。次に来てくれた時には、きっとお付き合いするから」と、手をこすり合わせた。
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