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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百九十四) 

2022年02月09日 外部ブログ記事
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「社長、お早うこざいます」 晴れ晴れとした表情で、五平が武蔵を迎えた。「おう、ご苦労だったな。どうだった、怒り心頭ってところか?」「はあ、まあ。突然でしたから、あんなものでしょう。しかし最後は納得してもらえましたよ」「嘘を付け! 渋々ってところだろうが。娘を手放すってのは、売るのも同然だ。あ、すまん。五平には嫌なことを思い出させたか?」「良いんです、社長。ま、少しごねられましたがね。最後には分かってもらえました」「まあいいさ。俺が出向いた時に頭を下げればすむことだ。問題は小夜子だな。挨拶に行ったと知ったらどんな顔をすることやら」
 即断即決を旨とする武蔵が、ぐずぐすと先延ばしにしてきた小夜子との婚姻をやっと決断したというのに、当の本人に伝えていない。信じられぬ思いで「社長、話してないんですか? らしくもないですな。万が一にも、四の五の言われるようなら、ガツンと言ったらどうですか」と詰め寄った。「うん、それがなあ……。どうも小夜子の前に立つとなあ。ま、近々話すさ」「どうも小夜子奥さんにはからっきしですな」「ははは、惚れた弱みかな? らしくもないな、確かに」 頭を掻き掻きの武蔵だ。
「社長!」 高揚した顔で事務の徳江が息せききって駆けこんできた。「どうした、徳江。お日さまが西からでも昇ったか?」「冗談を言ってる場合じゃありませんよ。お姫さまが、いえ小夜子奥さまがお見えなんです」「小夜子だと!」 素っ頓狂な声をあげる武蔵に、「おやおや、噂をすればですね社長。あたしはこれで引っ込みますわ」と、にやける五平だ。
「社長!」 高揚した顔で事務の徳江が息せききって駆けこんできた。「どうした、徳江。お日さまが西からでも昇ったか?」「冗談を言ってる場合じゃありませんよ。お姫さまが、いえ小夜子奥さまがお見えなんです」「小夜子だと!」 素っ頓狂な声をあげる武蔵に、「おやおや、噂をすればですね社長。あたしはこれで引っ込みますわ」と、にやける五平だ。
 予想しなかった大歓待を受けた小夜子が、顔を上気させながら「なあに、あたしが来たらまずいことでもあるの? 」と、上機嫌で部屋に入ってきた。「そんなことはないさ、大歓迎だ。な、徳江」「もちろんです。毎日でもお出で頂きたいですわ。みんな喜びます」「ありがとう」「今日はどうした? えらく地味な服じゃないか」
「これから病院に行くの」「そうか。それじゃあ、と。これで果物でも買っていってやれ。そうだ、帰りに映画でも見て行くか?」「うーん、一人だと……」「なんだ? ひよっとして怖いのか?」「そうじゃないけど、一人じゃつまんないもん」 武蔵の背広の裾にじゃれながら、言う小夜子。いじらしさを見せる小夜子に、つい会社だと言うことも忘れて抱きしめた。

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