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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百九十二) 

2022年02月03日 外部ブログ記事
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「なにを言うんじゃ! 先夜の佐伯ご本家にたいする失礼も、このことからじゃろうが! お前がなんと言おうとこの話はまとめるんじゃ! これは竹田本家の命じゃ」 普段ならば、ここでシュンとしてしまう茂作だ。しかし、ことは小夜子の結婚話とあっては、茂作も引き下がれない。「小夜子の一生のこと、いくらご本家といえども口出しは無用にお願いしたいものですわ」「まあまあ、繁蔵さん茂作さん。落ち着いて話しましょうや。じつはな、茂作さん。わしがついてきとるのは、ご報告がありましての。実は、今日お見えになった加藤さんから、村に寄付金をいただきましたんですわ。ご本家と茂作さんお二人さまからと言うことで、それぞれ十万円をの」
 寝耳に水のことだった。茂作だけならず竹田本家名での寄付など、思いも寄らぬ。外堀を完全にうめられては、いかんともし難い。蜘蛛の巣にかかった蝶のように、逃げ場を失っていく。「ううぅリーダー」と、茂作が唸り声を上げる。「お婆さまも、大喜びじゃ。でかした! と、おほめの言葉をいただいたしの。茂作のしつけをほめてみえた。もう上機嫌での、明日にでも本家に来いとのこどしゃから」 繁蔵の言葉も、耳に入らない。大きく頷く助役が、憎らしく見える。「いね! いねえぇ!」。しぼり出すような茂作の声に、これ以上の長居は無用と立ち去った。「いいか、明日にでも顔を出すんじゃぞ!」。重蔵の帰りぎわの声が、茂作の耳につき刺さった。
 二人が帰ったあと、すぐに戸口のかんぬきをかけた。「タキ、タキよ。だめじゃ、もう。盗られちまったよ、みたらいとかいう馬の骨に」 肩をがっくり落とした茂作は、ふらふらと立ち上がり、断っていた酒に手を伸ばした。アナスターシアのおくってくれたウィスキーを、湯のみ茶碗に並々と注いだ。琥珀色の液体を、ぐいっと喉に流し込む。“グオッ! ゲホッ、ゲホッ……”「な、なんだこれは。のどが痛い、ひりつくぞ」 アルコール度数の高いウィスキー、水で割るとは知らぬ茂作だ。あわてて、焼けつく胃袋に水を流し込んだ。「うー! 東京者はこんな酒をのんでおるのか。うーむ。気取った連中ばかりじゃと聞くが、変なものを飲むもんじゃ。小夜子も、こんなものを飲んでおるのか? 小夜子やあ」

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