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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百九十一) 

2022年02月01日 外部ブログ記事
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 村長室に通された五平が、「竹田茂作さんと竹田繁蔵さん名義で、それぞれ十万円寄付をさせていただきます。ご確認していただきたい」と、札束をテーブルの上にわざと、ドンと音を立てておいた。「それはどうも、ご奇特なことで。で? 竹田さんとはどういったご関係でございますか?」「それは、まあ、その内に分かりますでしょう。今は、詮索無用にねがいますかな」 勿体ぶった言い方で煙に巻いた。ではありがたく、と手を出そうとする助役を押しとどめて、「加藤さんでしたか。失礼ですが、どこぞの会社関係の方で?」と、村長が五平に念を押した。「いや、これは失礼。富士商会という会社の専務をやらせてもらっております。御手洗というのが社長でして」
 そこまで言うと、喉をうるおすためとばかりに茶をすすった。「こりゃあ、うまいお茶ですなあ。こちらで生産しておられるので? うーん。一度持ち帰って、社長に具申しますかな。当社での販売をしては、と」 相好を崩して、一気に空にした。助役が、もう一杯いかがですかと声をかけると、是非にもと五平が答えた。「ご心配にはおよびません。寄付をしたからと言って、無理難題を押しつける気はさらさらありませんので。あくまで、御手洗の個人的なことですから。村に対してどうのということは一切ありません」
 二杯目の茶を飲み干した五平は、さも満足げに頷きながら「それではこれで」と席を立った。まだ警戒心のとれぬ村長ではあったが、帰るという相手を引き留めるわけにもいかず「とりあえずお預かりいたします」と告げるのが精一杯だった。 役場を出るときには、村長以下全員の敬礼を受けた。「追いかけて行け、どこかに向かわれるようじゃ。茂作の所か、それとも本家の方か、確認するんじゃ。できれば、どういった素性の金かもな」
 そして今、安堵の胸を撫で下ろす。「村長、よろしかったですな。それにしても、寄付金とは」「いゃあ、有難いぞ。金は、幾らあっても困ることはない」 その日のうちに、寄付金のことが村中にひろまった。竹田の本家に助役がむかい、繁蔵ともども茂作の家にむかった。繁蔵の声掛けに、「な、なに用です。」と、茂作は驚きをかくせない。「なんで黙っておった? こんな慶事を教えてくれんとは、どういう了見じゃ。ま、いい。なんにせよ、目出度い」「わ、わしはまだ、承諾しとりませんでの」 悦に入る繁蔵に、茂作が口を尖らせた。

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