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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百七十六) 

2021年12月21日 外部ブログ記事
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「小夜子。どうだ、俺の嫁にならんか。こんな時に、と思いもしたがいつまでもだらだらしても仕方がない。
小夜子の爺さんも大事にする。小夜子には内緒だったけれども、月々仕送りをしてた。
心配するな、小夜子の名で送ってるから。それと、相場の方も片は付けてある。だから何の心配もいらん。
そうだ、ここで一緒に暮らすか?」
「タケゾーはどうしてそんなに優しいの?」
「何でかな、俺にも分からん。案外惚れるというのは、こういうことなのかもな」

 武蔵からの真摯な言葉に、思わず涙してしまう小夜子だ。
そして情の薄さを覚える正三に対する思いが、薄れていく小夜子だ。
一通の手紙、一葉の葉書さえくれない――情の薄さを感じさせる正三が憎くさえ思えてしまう。。
“そうよ、あたしにはお爺さんがいるんだわ。これから恩返しをしなくちゃいけないのよ。
正三さんにそれができて? 跡取りなのよね、正三さんは。でもきっとおっしゃるわ。『大丈夫です、お世話させていただきます』って。
でもそんなこと、ご実家がお許しになるはずがない。あたしを嫁としてお認めになるなんて有り得ないことだわ。
そうよ、正三さんを苦しめることにもなるわ。今も、苦しんでらっしゃるのよ。
だからお手紙の一通も届かないのよ。あたしって、ほんとに罪な女だわ”
 日に日に、アナスターシアへの思いが薄れていく。と共に正三への思いもまた消えていく。
“違うの、違うのよ。忘れているわけじゃないわ、アーシア。
あなたが言ったのよ、『いまをしっかり生きなさい』って”

「今日は、満足したか?」
「うん、おいしかった! ねえ、タケゾー。アメリカ人って、いつもあんな食事なの?」
 あれ以来、小夜子の呼び方が変わった。武蔵のたっての願いに、小夜子が折れた。
小夜子にしても、‘お父さん’に違和感を覚えていた。渡りに船の観はあった。
「あんなとは、肉料理かってことか?」
「うん」
「そんなこともないだろう。じゃが芋をすりつぶしたサラダやら、大豆なんかも食べてるらしいぞ」
「ふうん、そうなんだ。他には、野菜なんかは?」
「食べてるぞ。ホウレン草が、有名だ。ポパイって奴なんかは、普段は弱いくせに、ホウレン草を食べた途端にバカ強くなるぞ」

「ホウレン草って、そんなに凄いの?」
「ハハハ、漫画だ、漫画。アメリカで大人気の、な」
「なーんだ、嘘なの? 信じかけちゃった。タケゾーが言うと、本当のことに聞こえるから」
“小夜子の奴、ほんとに変わったな。あのロシア娘の死を知ってからだ。俺に頼りきっている。そろそろ、かな”
 デザートのアイスクリームを食している小夜子、至福の時を満喫している。

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