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敏洋’s 昭和の恋物語り

ボク、みつけたよ! (二十五) 

2021年12月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 おとよの献身的な世話によって、みるみる若者も元気になりました。
雪のように白かった若武者の肌も赤銅色に変わりまして、村人たちと変わりません。
手ぬぐいでほっかむりなどしておれば、村に入り込んでも見咎められることもなくなりました。
おなごの世話ばかりにはなっておられんとばかりに、時に浜の大網引きに入ったりもしました。
「そんな腕じゃおなごにも負けるぞ」とからかわれつつも、次第になじみ始めました。

 しかしさすがにどこの誰とも分からぬ若者でございます、不審がる者が出てきてもおかしくはありません。
「どこのむらのものだ」と騒ぎ出して、とうとうその正体がバレてしまいました。
よりにも寄って平家の落ち武者だということで、更にはかくまっていたということになれば、どんな難事になるかもしれません。
すぐにも突き出せということになりましたが、おとよが涙ながらに訴えます。
「ややこが、このおなかにおりまする」。「二人してこの村を出ますゆえに」と、あたまをこすりつけて懇願いたします。
無論のこと、嘘偽りではございます。
しかしこのような閨ごとのことは、当の本人しかわからぬこと。
村人たちも「まさか……」「むくなむすめなのに……」と絶句いたします。

 しかし当の若武者はといえば、どっかと胡座をかいたままでございます。
「わたしは雲上人である。そなたらの弾劾は受けぬぞ」。大声を張り上げて、村人たちを威嚇します。
遠巻きにした村人たちは、口々に「出てけ!」「突き出すぞ!」と、棒っ切れを突き出しています。
 命乞いをせぬ所は、さすがに肝が据わっていると頷く年長者も居ましたが、このままにしておく訳には、というのが大半の村人たちでした。
役人に突き出すかどうかの相談が始まりましたが、おとよの泣きすがる姿に、村人たちもその日には決めることが出来ませんでした。
とりあえずのところ網小屋に閉じ込めて、明日にもう一度話し合うこととなりました。

 翌朝早くに網小屋を見回ったところ、かんぬきが外されており、中に閉じ込めていた若武者が居ません。
更には、おとよもまた姿を消していました。
村人たちの詰問にあい、とうとう母親が白状しました。
今朝早くに、おとよが若武者を小屋から解放して、そのまま村を出たというのです。
行き先については口を濁していましたが、誰も追っ手は来られぬだろうと速見郡の鉄輪に逃げたと白状しました。

 地獄の猛り狂う地と言われる鉄輪では、とてものことに追いかけようという者は現れません。
そこまでの思いならば仕方あるまいと、皆は納得したのですが、父親だけは納得しません。
「連れ帰った者に娘を嫁がせる」と宣言しました。
しかしやはり、誰も手を挙げる者はおりませなんだ。
それぞれの家に戻りかけたときに、意を決して一人が「おらがもらうぞ!」と、浜辺沿いに走り出しました。

 女連れであったがために、とうとう追いつかれてしまいました。
「ア(吾)は、帝に不忠なり」「ワ(私)は、親に不孝なり」
「ともに不忠不孝なれば、この煮え滾る池の湯に身を投じ、その罪を贖うものなり!」
 山の中腹まで逃げたところで諦めた二人は、赤いひもで互いの腕を結びあい、下の池に飛び込みました。
水底の見えるきれいな池だったのですが、赤いひもから滲み出した赤色で真っ赤に染まってしまいました。
そしてそれが、現在の血の池地獄となったということです。

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