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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百七十五) 

2021年12月16日 外部ブログ記事
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「富士の御山の絵を飾っていますとね、『HOKUSAI,HOKUSAI!』と大騒ぎするんです。
彼らには、富士の御山を描く絵師は、葛飾北斎だけなんですよ。
ケバケバしい飾りなんぞ、辟易しているんですな。『WABI,SABI』だと大喜びします」
 小声で話すようなことでもないのだが、親密感を感じさせるがための、武蔵の常套手段だった。
そして「もっとも、ここで終わるはずもない。この後に大人のお遊びがj待ってるんですがね」と、更に小声で続けた。
そして「いやいや、それは僕の仕事じゃない。
千夜子さんもご存じでしょう、専務の加藤に任せています」と、僕は聖人君子だとばかりに手を振った。
「まあ本音を言いますとね、むさ苦しい男たちとこの部屋ではねえ」と、大きく笑い声を上げた。
 
 武蔵が千夜子の傍から離れたとたんに、
「社長さま、千夜子と呼び捨てにしてくださいましな。社長さまには、そう呼んでいただきたいですわ」と、武蔵の目に挑んだ。
“さあ、この粉かけが分かるかしら?”
“この女、誘ってるのか? 呼び捨てにしろとは。然も、千夜一夜なんぞを持ち出して。
しかし色香たっぷりの女だ、久しくお目にかかってない”

 狐と狸の化かし合いは、武蔵は嫌いではない。
互いの腹の内を探り探りの会話を愉しむ癖を持つ武蔵でもある。
小夜子との会話ではそれが成り立たない。
何ごともストレートに受け止めてしまう小夜子には、駆け引きがまるで通じない。
しかしそれがまた、日々の化かしあい、駆け引きの世界に過ごす武蔵には新鮮でたまらない。

 突然に居住まいを正して、千夜子が座布団から降りた。
そして何にも増して、お辞儀の折の襟足が悩ましい。
「社長さま。本日はお忙しいところを、ありがとうございます。
更には、このような過分なもてなしまで頂きまして」
「とんでもない! こちらこそ、ご迷惑をかけました。
本来なら、こちらからお礼の連絡をせねばならんのですから。まったくお恥ずかしいことで」

「それにしましても、お可愛らしい奥さまで。
でも驚きましたわ、たかがモデル如きにあれ程入れ込まれるとは。
あっ、失礼しました。言葉が過ぎまして」
「いやいや、良いんですよ。まだ、ネンネですから。
なりは大人ですが、まだ夢見る少女でして。あのモデルと世界を旅するなどと、夢物語りを」
「羨しいですわ、それは。あたくしなんか、日々の暮らしに追われてます」

 武蔵の盃が空になると、すぐに千夜子の手が伸びる。勢い武蔵の酔いも早まりそうだ。
“おっ、来たな。大丈夫! あんたは信用できる。
出してやるよ、たっぷりと。別の物も出させてくれると嬉しいんだが”
 鼻の下が伸びてはいないかと、ちと気になる武蔵だ。

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