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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百六十五) 

2021年11月24日 外部ブログ記事
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「実はな、小夜子。そのアナ、なんとか……がな、アーシアって呼ばせてくれ。
アーシアはな、睡眠薬の飲みすぎだったんだ。聞いたか? アーシアから」
 小夜子の反応をうかがいながら、武蔵はゆっくりと話を続けた。
「ううん、何にも。そう、睡眠薬を飲んでたの? やっぱり、早く小夜子が行ってあげれば良かったのね」
「そうだな、ほんとにそうだな。けど、俺が寂しくなるがな。小夜子、落ち着いて聞いてくれよ。五平の調べによるとだ」
 突然小夜子の指が、武蔵の声を遮った。武蔵の唇に手を当て、小夜子が口を開いた。
「ちょっと待って。アイス、溶けてない? 
タケゾーにも上げようと思ってね、アーシアには一つしか上げなかったのよ。
偉いでしょ、小夜子。タケゾーのことも、キチンと考えてるんだから」

 テーブルのアイスに手を伸ばして、「おかしいわ、おかしいわよ。こんなの、絶対おかしい!」と、金切り声をあげた。
「どうした? 大丈夫だぞ、俺に話してみろ」
「アーシアに一つ上げたのよ。なのに、三つ入ってる。
開けたとき、三つだったのよ。なのに、なのに、どうしてなの!」
「小夜子、それは違うぞ。五つ、入ってた筈だ。
五平に、五つ買ってこいと言ったんだ。
三つはな、身を切ると言って縁起が悪いだろう? 
四つは死だしな。だから五つにしろ、ってな」

 五平の購入数など知る由もない武蔵だが、何とかなだめようとする武蔵だ。
「そっか、そうだよね。小夜子の勘違いだね。ね、食べよう」と、武蔵に差し出た。
「どうせなら、小夜子に食べさせて欲しいがな」
「もう、甘えん坊ね。いいわ、じゃ、アーンして」
「うん、うまいぞ。こんなにうまいアイスは、初めてたぞ」
 相好を崩して、小夜子が運ぶアイスをほおばる。
「でしょ、でしょ。アーシアも、美味しいって言ってた」
「大っきな目をね、まん丸にしてね、“フクースナ!”って言ってくれたよ」
「なんだ? ふくすけ、だ? 足袋のことか?」

「ハハハ、フ、クー、ス、ナ、だよ。タケゾー、分からないんだ?ロシア語は」
 武蔵の口の中で、スプーンが踊る。カチカチと、歯に当たり音を立てる。
「ロシア語でね、おいしいよって言う意味なの」
 得意げに小鼻を膨らませる、小夜子。思わず抱きしめたくなるような、小夜子だ。
「小夜子はロシア語が分かるのか? そいつは凄いぞ! ソビエトと貿易を始めたら、小夜子が通訳してくれ」
「うふふ……いいよ。通訳してあげる。アーシアにいっぱい教えてもらうから」
 どうしてもアナスターシアから離れない小夜子だ。

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