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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百六十四) 

2021年11月23日 外部ブログ記事
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 一礼をして立ち去ろうとする五平を「すまんが、ニ、三日会社を休むぞ」と、呼び止めた。
「もちろん、そうなさってください。とに角、一日も早い回復を祈ってますよ」
 やっとその気になってくれたかと安堵の気持ちを覚える五平だが、その一方で、女のことで会社を休むなどまるで考えられない武蔵なのに、と不安の陰が過りもした。
「そうだった、今日のパーティはどうした」 
 思い出したように言う武蔵に対し
「大丈夫です。あちらさんは家族の異変に対しては、我々の想像が出来ぬほどに寛大ですから。
フィアンセだと告げたら、自分のことのように心配してくれましたから」と、安心してくれてばかりに笑顔を見せた。
がその瞬間に、こんな時に笑顔というのは似つかわしくないかもと思った。
しかし武蔵もまた、「そうか、安心した」とかすかに笑みのある表情を見せた。

「さてと、小夜子はどうしてるんだ?」
 五平を送り出したあと、すぐに二階へ上がった。
「入るぞ、小夜子」。声を掛けてみるが、中から返事はなかった。
そっとドアを開けると、ベッドの中で眠りについている小夜子がいた。
脇のテーブルにアイスの箱が、そのままになっている。どうやら口にする前に、眠りについた模様だ。

「だれ?」「起きたか?」
 小夜子が気だるそうに起き上がった。
そしてその口から発せられた意外な言葉は、武蔵に奇異な感覚をもたらした。
熱に浮かされてのことだと思いはしたのだが。
「アーシアが来てくれたわ。タケゾー、会わなかった?」
“熱で妄想を抱かれるかもしれません。その折には、先ほどのように、決して否定なさらないように。
本人が混乱します”。医者の、帰り際の言葉を思い出した。

「そうか、来てくれたのか。そりゃ、良かったな。
俺も会いたかったよ。アナ、スターシアだったか? 
報告したかったぞ、小夜子を大事にするからって。安心してくれってな」
「アーシア、小夜子に謝ってくれたよ。『約束破ってごめんね』って。
手紙書きたかったけど、我慢できなくなりそうだから書けなかったんだって。
小夜子と一緒にベッドで寝てたの、アーシア。小夜子と一緒だとよく眠れるんだって」

「そうか。小夜子と一緒だと、良く眠れるのか。
だったら、俺も一緒に寝たいなあ。最近、眠りが浅いんだ」
「うん、いいよ。アーシアも、そうしてあげてねって言ってた」
 頭に手を乗せると、薬が効いたらしくほぼ平熱に戻っているように感じだ。
背中に手を回すと、じっとりと濡れている。このままでは再び熱を出すかもしれない。
「服、着替えような。手伝ってやろうか?」と、小夜子の反応を見た。
「助平!」。普段ならば、飛びかからんばかりに絶叫する小夜子が、力なく「うん」と頷いた。
思わず「よし、よし。それじゃ着替えるか」と、肩を引き寄せた。

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