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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百六十三) 

2021年11月18日 外部ブログ記事
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「ああ、これですか。ご所望のアイスです。ドライアイスを入れさせてますから大丈夫だとは思います、、、」
 五平が言い終わらぬうちに、小夜子の手が伸びる。
「ちょうだい、ちょうだい!」
「小夜子、二階で食べてろ。五平と少し話があるから」
「はーい!」
 小夜子の明るい返事が、五平を驚かせた。
電話から聞こえてきた様子はただ事ではなかった。今にも後追いをするのではないか、そんな不安に刈り立たせるものがあった。

「そんな不思議そうな顔をするな。空元気だよ、空元気だ」
「でしょうね」
「明日が心配だ。明日も元気なら明後日だ。とにかく気を紛らわすことだ。
バタバタさせて、疲れさせて、何も考える時間を与えないようにしなくちゃな」
「へえー」。にやつく五平に、「何だよ、その『へえー』は」と、少し声を強くした。
「いや、感心したんです」と、顔の前で手を振る。
「ああ、今のは医者の受け売りだ。医者の言うことだ。間違いがないだろうに」
「いい機会じゃないですか、武さん。身を固めてくださいよ」

二人で酒を酌み交わす折に、五平が毎度の如くに口に出す。
当初こそ「ああその内にな」「相手が見つかればな」と答えていた武蔵だが、最近では鼻で笑うだけだった。
それが今日は「近いうちに、会社に連れていくか。体調のいい時にでも」と、本気度をうかがわせた。
「そりや、いい。皆、喜びますよ。
心配してますからね、みんな。元気な姿を見たら、きっと大騒ぎですよ。
とに角、“お人形さんだぞ!”と言ってありますから」

「オーバーなことを。まあ、いい。で、モデルの状況はどうだったんだ」
「犬が死にましてね。そりゃもう、ひどい落ち込みようだったらしいですわ。
何せ、天涯孤独の身の上の娘でして。噂の域を出ないんですが、ロシア皇帝の娘の一人じゃないかと」
「おいおい、話が出来すぎてないか?」
「まあですね。ガセネタだと、あたしも思いますがね。
まあ、ノイローゼになったらしいんですよ。
しかしアメリカさんてのは、酷な国ですわ。契約だからと、仕事を続けさせましてね」
「おいおい、そんな状態でも仕事させるのか?」
「ま、それだけ人気があるってことでしょうね。
結局は、お定まりの不眠症になりまして。睡眠薬のお世話になった、と」

 今でこそ富士商会も、体調を崩した社員には
「休め、休め。他の奴らに移されちゃ叶わんからな」と冗談交じりの声をかけ、すぐに退社させた。
しかし設立当初には「馬鹿野郎! たるんでるからだぞ。
仕事をして汗を掻いたら病の方から逃げ出してくれるさ」と、尻を叩いたものだ。
「そうか。しかしあれは、常習癖がつくって話だろうが」
「仕方ないでしょう。眠れないって、暴れたってことですから。
ところがですね、小夜子さんと共寝して熟睡できたと言うんですわ。
小夜子さんの写真を枕元に置いておくと、不思議と眠れたと言うんですわ」
「そりゃまた、すごいご利益じゃないか。それが何でまた、なんでこんなことになったんだ?」
「分かりません、それは。何か、あったんでしょうな。不眠症が再発して、薬の多量服用です。で、帰らぬ人になったということです」
「分かった、ご苦労だったな」

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