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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百六十一) 

2021年11月16日 外部ブログ記事
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 再度の連絡が入ったときには、もう夜になっていた。
「えらいことです、武さん。小夜子さんの話は、ほんとのことでした。
トーマスに頼んだところ、詳しい事情が分かりました」
「なんだ、ほんとのこととは。なにを、興奮してるんだ」
 五平が武蔵を武さんと呼ぶのは、余程に慌てている時だ。
「どうやら昨年あたりなんですがね、アなんたらという娘っ子が体調を崩していたらしいですわ。
そこで小夜子さんに出会って、惚れると言ったら変ですが、ご執心となったらしいです」
「なんで分かるんだ、そんなことが」

 女が女に惚れる、そんなことは考えたこともない武蔵だ。
確かに、男が男に惚れるということは分かる。
?気のある男に出逢った経験のある武蔵であり、己自身もそうありたいと憧れの気持ちを抱いたこともある。
そして今、その?気のある男として、五平は勿論のこと会社の従業員たちから慕われている。
しかし、女が女に惚れるとは……。どうしても理解できない。

 しかも、名を成した女性ではなく、小娘なのだ。
わがままで高慢ちきで嫉妬心も強い。どうひいき目に考えても、そこらにいる田舎娘なのだ。
お前はなぜここまで固執するのかと問われれば、武蔵も返答に困る。
琴線に触れた女だ、そう言わざるを得ない。
まさか、アナスターシアという女もまた、武蔵が見つけた小夜子の本質に触れたのか……。
“アナスターシアなる女が俺と同類なのか”。
小夜子を奪おうとするアナスターシアに、猛烈な嫉妬心を感じる武蔵だ。

「えっと、何て言ったか……。そう、マッケンジーですわ、服飾デザイナーの。この男がゲロしたらしいですわ」
 得意げな話し方をする五平に対しても、怒りがこみ上げてくる。
「ああ、もういい! 電話じゃ、だめだ。来い、すぐに来い!」と、思わず怒鳴りつけてしまった。
「どうしたの? 何か、あったの」
「起こしてしまったか? すまん、すまん」
 まだふらつき気味の小夜子が、階段の手すりをしっかり掴みながら降りてくる。
「何かあったの?」
「うん、五平を呼んだ」と、小夜子を支えながら武蔵が答える。

「あたし、あの人嫌い」
 反射的に、小夜子の口から出た。
「そうか、嫌いか。そいつは困ったな。俺にとっちゃ、福の神なんだがな。
何と言っても、小夜子に引き合わせてくれた、恋のキューピットさまだ」
“嫌いよ、大っ嫌い!嫌い、嫌い、嫌い!”
 心の中で、何度も呟いた。眉間にしわを寄せて、嫌悪感をあらわにする。
あのような出会い方をしていなければ、これほどのことはなかったかもしれない。
キャバレーでのタバコ売り時代を知る、その五平が嫌いだった。
惨めな、小夜子にとって恥部と感じる時代を知るのは、武蔵一人で良かった。
“五平なんか、この世から消えればいいんだわ”

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