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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百五十九) 

2021年11月10日 外部ブログ記事
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 小夜子の変事を外出先で聞かされた武蔵は、その足で自宅へ戻った。
武蔵の目に入った小夜子は、ソファに腰掛けてじっと一点を凝視している。
背筋をピンと伸ばして、時に笑みを浮かべる。
連絡を受けた小夜子は「取り乱しています、泣き叫んでいます」と、狂女だと言わんばかりだった。
しかし眼前にいる小夜子は凜として、何ごともなかったかのように見える。

「大丈夫だぞ、もう。話してみろ、何があった?」。
小夜子の前に座り武蔵が声をかけた。
武蔵が小夜子の意識の中に入った途端に「ヒクッヒクッ」としゃくり始めて「アーシアがね、アーシアがね、、、」と呟く。
しかしその後が続かない。何度も「アーシアが」という名前が漏れるだけだった。
「アーシアがどうした? 」

“やれやれ、またアーシアと来たか。何者だ、アーシアってのは。調べなくちゃいかんな、本格的に”
 少々辟易している武蔵だが、可愛い小夜子のためと我慢の子だ。
「来ないの、来てくれないの。淋しいから来て欲しいって、言ってるの。でもね、会えないの、もう」
“来ないだ? 約束でも……そう言えば、そんなことを言っていたなあ。それが、会えないとはどういうことだ?”
 どうにも要領を得ない。
ベッドの端に腰をかけて「小夜子、こっちにお出で。詳しく話してくれ、手助けしてやれるかもしれん」と、小夜子を膝に乗せて髪を指ですいた。

「ねっ! タケゾー、タケゾー。アーシアを助けてあげて」
 初めてのことだ。名前で呼ぶことなぞ、一度たりともなかった。
熱のせいか? と思いはするが、つい顔がほころんでしまう。
「ああいいとも。小夜子の頼みだ、何でも聞いてやるぞ」
「ありがとう、タケゾー」
「それでどこに居るんだ?」
 また、大声で泣き叫び始めた。

「分かんない、分かんないの。小夜子には、何も分からないの。
小夜子がね、英会話がだめだからね、アーシアは手紙をくれないの。
小夜子がね、学校をおさぼりなんかしたものだから、アーシアが怒ってるの、きっと」
「そんなことないさ。そのアーシアも、忙しくてだめなのさ」
「そうよね、そうよね。アーシア、世界中を旅してるから、お手紙書く暇がないのよね」
「そうとも、そうに決まってる」

「ショーにね、来るはずだったの。でも来ないの。淋しい淋しいって呼んでるの。行ってあげなきゃ」
「そうだな、小夜子は優しいからな」
「タケゾー、連れてって。アーシアの所に連れてって」
 すがりつくような目で、武蔵を見上げる小夜子に、
打ちひしがれた小夜子に、武蔵の想いは更に強まった。
「よし。それじゃ、一緒に探すか?」
「うん、探そうね。待ってるの、アーシアは。小夜子早く見つけてって、呼んでる」
「よし、それじゃ、ひと眠りしろ。起きたら探しに行こう」

 ゆっくりと体を横たわらせて、静かな寝息を立てる小夜子を見守った。
「結構です。ひと眠りされたら、精神的に落ち着くでしょう。
体に異常はないないですからな。心配はいりません。
ま、心配事をなくしてやるのが一番ですよ」
「分かりました、先生。ご足労をおかけしました」
 往診に訪れた医者を送り出した武蔵、そっと小夜子の寝姿を確認してから電話を取った。

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