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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百六十) 

2021年11月11日 外部ブログ記事
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「専務を呼んでくれ」
 電話の向こうが騒がしい。
今朝、「小夜子を連れてくることにした。俺のお姫さまを、皆に紹介しようと思う」と、告げたばかりだ。
「ウオー! 社長の奥さまに会えるんだ」
「床の間にずっと飾られたんでしょ? 早く、お会いしたいわ!」と、皆口々に、待ち遠しさを言い合った。
 その小夜子が倒れたと聞かされて、全社員に動揺が走った。
「熱を出してみえるとか」。「パーマとかの薬に酔われたんじゃ?」。
果ては、「ひょっとして、お目出度かしら?」などと、言い出す者さえ居た。

「おう、五平か。心配かけたな、もう大丈夫だ。相当なショックを受けたらしい。
それでだ、早急に調べて欲しいことがある。ファッションモデルの、アナ何とかと言う名だ。
消息を調べてくれ。正確な名前? 女の子に聞け、知ってる筈だ。何でも、ロシア娘らしい。
それから、今日は戻らん。小夜子に付いてるよ。最近ほったらかしだったからな」
「タケゾー、タケゾー!」
 二階から、小夜子の声がする。慌てて上がった武蔵を見つけるなり
「どこに行ってたの! 一人にしないで、小夜子を」と背広の裾を掴んだ。

「悪かった、悪かった。さ、ベッドに入れ。休んでろ、な。そうだ、冷たいものを、アイスでも食べるか? どうだ?」
「要らない。タケゾー、出かけちゃう」
 武蔵の上着の裾を、しっかりと掴む小夜子だ。
「分かった、分かった。それじゃ、良くなったらにするか」
「うん。それとね、お肉が食べたい」
「ハハ。そうか、そうか。小夜子はステーキが良いか。
よし、それじゃ、牛一頭分食べさせてやるぞ。だから、寝ろ」
「うん。どこにも行っちゃいやだよ」
「ああ、約束だ」

 小夜子の傍らで、うとうととうたた寝していた武蔵。電話のベルに起こされた。
時計を見ると、小一時間ほどしか経っていない。
小夜子に握られた手を、そっと外して立ち上がった。
「おう、早かったなあ」
「私も驚きですわ、すぐに連絡が来ました」
「で? どこなんだ、居場所は」
「居場所もなにも、あの世ですわ。事故死か自殺か? と、大騒ぎらしいですわ」
「おいおい。そんなに有名人なのか? そのアナなんとかは」

 予想外の報告に驚く武蔵だ。田舎娘に声をかける女なんて、と高をくくっていた武蔵だった。
「私らみたいな無粋人には縁のない世界の大スターらしいですわ。
会社の娘っ子も、大騒ぎですわ。泣き出す子もいる始末でして。
参りました、まったく。しかしなんでまた、そんな大スターさんを調べろなんて」
「いや、小夜子がな」
「まさか! それがショックで、ですか? そんな大仰な」
 明らかに憤懣やる方ないといった五平だ。

「違うんだよ、五平。単なるファンじゃないらしい。
何でもな、その大スターさんと義兄弟、じゃなくて義姉妹って言うのか? 
家族になる約束をしてたらしいんだ」
「ちょっと待ってくださいよ」
「待て待て、五平。相手がどこまで本気だったかは、分からん。
しかし小夜子は信じ込んでたみたいだ。
だからこその、ショックの大きさだ。分かってやってくれよ」

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