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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百二十六) 

2021年08月25日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「ねえねえ、この間買い物をしてたらさ。
ふふふ……奥さんって、言われちゃった。参っちゃうわ、ほんと。
『お嬢さん、何にします? ああ、ごめんよ。みたらいさん家の、奥さんだったねえ。
どう? 新婚生活は。優しくしてもらってるかい?』ですってえ」
「なんて答えたんだ? 小夜子は」と身を乗り出す武蔵に対し「ふふ、内緒。内緒なの」と、はにかんだ表情を見せながら、甘えたような声で言った。

「気になるじゃないか、その言い種は。言えよ、言わなきゃこうだぞ!」
 武蔵は両手を大きく広げ、襲いかかる熊の仕種を見せた。
「きゃあ、イやだあ!」と、慌てて小夜子は立ち上がった。
逃げ惑う小夜子を、何度も雄叫びを上げながら追いかけた。
「怖いよお、おうちの中に助平熊が出たよお! 誰か、助けてよお!」。
さながら鬼ごっこの如くに、家中を駆け回った。
廊下に飛び出した小夜子は、台所から玄関そして二階へと駆け上がった。

「どこだあ、どこだあ。美味そうなウサギはどこに逃げたあ!」
 小夜子は声を殺して、階段の途中で武蔵を待った。
ウキウキとした気分で、大きく両手を上下させる武蔵を見つめた。
“ほら、ここよ。ここに居るわよ。どうして外に行っちゃうのよ!”

 玄関の戸に手を掛けようとする武蔵を見た小夜子は、慌てて階段で足踏みをした。
「うん? 音がしたぞ。どこだ? どこからしたんだ、階段だったかあ?」
 武蔵がキョロキョロしながら、階段に目を向ける。
満面に笑みを浮かべる小夜子を見つけた武蔵は「おお、居たぞ! ガオォォ! 見つけたぞぉ!」と、のっそりと体を入れ替えた。
“キャッ、キャッ!”と声を上げながら、小夜子は階段を駆け上がった。
武蔵は、階段に手を掛けながら「逃げられんぞお、逃げられんぞお!」と、ゆっくりと登った。

 小夜子は奥の部屋に入り込むと、息をひそめて武蔵を待った。
「この部屋かあ、居ないぞお!どこだあ、階下に、逃げたかあ……
 呻くような武蔵の声が、小夜子に耳に届いた。
まるで子供のように、小夜子の鼓動が早くなる。ワクワクとしている。
“ここよ、この部屋よ。ここに、居るよ”

 廊下に出た音がすると、小夜子の心臓は早鐘を打ち始めた。
「一階かあ。待てよお、もう一つ部屋があるぞお」。
武蔵の廊下を這いずる音が、小夜子の耳元に届いてきた。
“来る、来るわ。どこ? どこに隠れればいいの?”。

部屋を見回すと、机と洋服箪笥、それにベッドがあった。
小夜子は慌てて、ベッドの中に潜り込んだ。
と同時にドアが開けられて「おぉっ、ウサギちゃんの匂いがするぞ。どこだあ、どこだあ」と、武蔵が入って来た。

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