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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百二十二) 

2021年08月17日 外部ブログ記事
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 武蔵宅での小夜子の生活は、まるで一人暮らしをしているが如きものだった。
武蔵と顔を合わせない日すら、間々あった。
小夜子が朝目覚めた時には、既に武蔵は出社していた。
夜は夜とて、小夜子が床に就いてからの帰宅が多い。

“わたしを避けてるのかしら……”。時に、そんな思いにすら囚われてしまう。
“体を求めてきたら、どうしょう”と危惧していたことが、笑えてしまう。
 それにしても不思議なもので、家事が苦手な筈の小夜子が、今は嬉々として勤しんでいる。
掃除、洗濯は勿論のこと、いつ帰るとも分からぬ武蔵の為に夕食を用意していた。
といっても座敷机に出来上がった料理を運ぶだけであり、はたきを持って指差される場所を軽くはたき、手渡される洗濯物を物干し竿にかけるだけだったが。

「社長さん、お千勢さんのことですけど」
「千勢がどうかしたか」
「いえ、そうじゃなくて……」
 珍しく、小夜子にしては口ごもる。
「意地悪、されてるのか? よし、明日は俺が帰るまで待たせておけ!」
 小夜子が慌てて、答える。
「あたし、なんです。あたしの、我がままなんです」

「我がままって。小夜子、話が分からん。順を追って話してみろ」
 焦る武蔵だ。これ程に小夜子を悩ませる千勢に対し、猛烈に腹が立ってきた。
千勢には手を出していない。
五平の手配で雇ったのだが、武蔵の思い描くアメリカ式のメイドではなく、おかめ顔の田舎娘がやってきた。
五平に話が違うと詰め寄ると「社長。お手伝いに手を出したらややこしいことになりますから」と、諫められる羽目になった。
「いっそ、嫁さんにしますか。それだったら飛びっ切りの美女を探してきますが」。
五平にやり込められた武蔵だった。

「あたし……、その……やりたいんです。ひとりで、全部。とにかくやりたいんです」
 相変わらず、口ごもりながらの小夜子だ。
「やりたいって、何を? したいことがあるなら、やればいい。
金がかかるんなら言えばいい。
小夜子の好きなこと、やりたいこと、何でもやればいい」

 顔を真っ赤にした小夜子がいる。いつもの挑むような目、そしてまた甘えるような仕種はまるでない。
どうにも今夜の小夜子は、武蔵には理解できない。
小夜子自身も“こんなことで何をウジウジしてるの”と、自分に納得がいかない。
茂作に対峙しているときの小夜子ではないことに、怒りすら感じてしまう。
“来て欲しいって頼まれたから、淋しいんだって懇願されたからなのに”。

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