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敏洋’s 昭和の恋物語り
水たまりの中の青空 〜第一部〜 (七十)
2021年02月10日
テーマ:テーマ無し
どうしても小夜子の涙が気になる幸恵は、意を決して尋ねてみることにした。
“もしかしてわたしの知らぬところでの、お父さまからの圧力にお兄さまが負けてしまったのでは”と、思ってしまった。
家を継がねばならぬ嫡男の正三と違い、己は他家に嫁ぐ皆のだ。
佐伯家に縛られることはない。
見合いの話がすでに届き始めたとは聞いているが、幸恵の気性を知る母親によって抑えられている。
大婆さまの意向が働き始めたことを薄々と感じてはいるが、意に沿わぬ相手に嫁そうとは思わぬし、最悪の場合には正三を頼ることすら考えている。
幸いなことに小夜子に気に入られているという自負心が、幸恵にはある。
それこそ、新しい女として自立すれば良いことと考えている。
しかし今、小夜子に異変が起きているのでは? と疑いを持ち始めた。
よもや正三に心変わりをするとは思えぬけれども、責任感の強さと共に気の弱さが気になる幸恵ではあった。
「小夜子さま。とてもぶしつけなことですし、お気に触ることかもしれませんが、お聞きしてよろしいでしょうか?」
「なあに、あらたまって。どうぞ、答えられることなら、よろしくてよ」
「小夜子さんの涙、初めて見ました。もしかして正三兄さんのことで、うちの親から何か……」。
すまなさそうに目を伏せながらの幸恵に
「あらあら、見られちゃったかしら? 心配なくてよ、正三さんのことじゃないの。
実はね、近々家を出ようかと思ってるの。
正直のところ、学業にまったく身が入らないの。焦りが、ね、あるの」
幸恵の肩に手を置いて、心配させてごめんなさいね、と目で送った。
「えっ! 行かれるのですか? 正三兄さんは、まだ暫く後のことになると思うのですが」
「ほほほ、正三さんとわたしの東京行きは、別物よ」
「そうなんですか、ここから出て行かれるのですか」
肩を落とす幸恵に、「お手紙を差し上げるわね、幸恵さんに」と、指切りの約束をする小夜子だった。
「待ってます、あたし。すぐに、お返事も書きますから」
“そうよね、どうしてかしら? ここのところ、突然涙が出てくるのだけど、どうしてかしら”
東京に出ることに対し、不安がないわけではない。
しかしその不安を打ち消すほどの、明るい未来を感じる。
実のところは、信じられないことなのだが茂作のことが気にかかる。
茂作に対し、特段の罪悪感を感じるわけではない。
“ごめんね”の一言で済んでしまう程度のものだ。仕方のないことだ、と思っていた。
しかし今、いよいよとなるとなぜかしら泣けてくる。
初めての心持ちで、どう考えたらいいのか、小夜子には分からない。
持て余す小夜子だ。小夜子の預かり知らぬところで、涙腺が緩んでしまう。
気が付くと、涙が頬を伝っている。幸恵が見た涙も、そんな涙だった。
小夜子に涙は似合わない。どんなに辛い時も悲しい時も、ついぞ涙は見せない。
“泣いたら負けよ、負けたら終わり”。
そんな思いが、小夜子を縛り付ける。
“悲しくもないのに、どうして涙が出るの?”。
自問しても、答えが出ない。
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