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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (六十九) 

2021年02月09日 外部ブログ記事
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 あれ以来、小夜子が何くれとなく幸恵に声をかけてくる。
昼休みには二人だけで音楽室に入り込み、ピアノを引き合ってみたりする。
校庭の木陰で、今日のようにおしゃべりに花を咲かせることもしばしばだ。
同級生たちから受ける羨望のまなざしが、次第に棘のある妬みの色に染まっていくのを感じ始めた。

休み時間には数人の仲間との間で笑い転げていた。
しかし今は、誰一人として幸恵にこえをかけるものは居なくなった。
寂しい気持ちに襲われることもあるが、やっかみの思いからだと分かっているだけにやむを得ないことに思えている。
そしてそれが、やがて優越感に変わり始めた。

今日も校庭の木陰に幸恵が行くと、かすかな寝息を立てている小夜子がいた。
そっと近付くと、小夜子の目に涙の滴後を見つけた。
「気丈な小夜子さまがお泣きになるなんて」。
そっと引き返そうとする幸恵に、「幸恵さん?」と、小夜子の声がかかった。
「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「いいのよ。ちょっと、ウトウトしていただけだから。どう? 皆さんお変わりない?」
「はい、正三兄さんも元気です」

「そう。あなたは?」
「わたし、ですか? わたしはいつも元気です。
今朝もしっかりご飯を頂いてきました。
いつもみたいにお代わりをしましたら、正三兄さんに言われました。
『少しは控えたらどうだ。最近、太ったんじゃないか? 小夜子さんを見習ったらどうだ!』なんて」
 コロコロと笑いながら、お腹の肉をつまんで見せた。

「あらあら、それはごめんなさい。でも、朝は大事ですことよ」
「小夜子さんの朝は、どんななんでしょうか? ごめんなさい、変なことをお聞きして」
「あたしも朝はね、しっかりと食べてるわ。
夜のお食事をね、控え目にしてるの。だ
から、朝はとってもお腹が空くの」
「やっぱりお夕食は控え目にされているんですね。あたしは、だめなんです。お腹が減ると、眠れないんです」
「そうね。慣れるまでは、辛いでしょうね。でも、少しずつでも、ね」

 小夜子を崇めるような視線を心地よく感じながら、“アーシアに比べたら、わたしなんかまだまだよね”。
幸恵とのおしゃべりに、アーシアと過ごしたあの夜のことが思い出される小夜子だった。
「分かりました、頑張ってみます」
「だめ、だめ。頑張りはだめ。頑張らずに、気楽に、時間をかけてね」
「でも、頑張らずになんて、できるものでしょうか?」
「頑張るとね、反動があるの。頑張るとね、疲れるでしょ?」
「はい、でも……」

「大丈夫! 幸恵さんなら出来るわ。ほんの少しだけ、控えればいいのよ」
「分かりました。あたし、がんば、いけない! 頑張らずに、やってみます」
「未来のステキな自分を思い浮かべて、ね 」

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