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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (五十二) 

2020年12月30日 外部ブログ記事
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「ただいまあ、お父さん。楽しかったよ、ありがとうね。
今度はね、お父さんもご一緒にどうぞだって。来年の早い時期にまた来られるようにするからって。
それまでにね、あたしは、絶対英会話が出来るようになってなきゃ」
 キャッキャッとはしゃぎ回る小夜子に、茂作はにこやかな表情を見せるだけだった。
昨日までの、いや小夜子が帰って来るまでの憔悴しきった顔が、ただいまの声と共に、消え去った。
一気に生気が戻った。
小夜子にはこの三日間の、茂作の苦悩が分からない。
寂しさ、苛立ち、不安、怒り、そして、そして、怖れ。
“このまま帰って来ないのじゃ? 澄江のように、このまま……。”
 しかし小夜子の声を顔を見た途端、その怖れが消えた。

「小夜子、小夜子。よお戻ったのお」
 初めて見る気弱な茂作に、奇異な感じを受ける小夜子だった。
「どうしちゃったの? 帰るに決まってるでしょうが。
正三さんから聞いてくれたんでしょ? 変なの」
 しかしそんな気遣いはすぐに消えてしまう。
ラララ、とショーで使われた音楽が口に出る。
軽くスキップしながら体をくるりと回してのターンが出る。
こうやってね、と茂作に歩き方を見せる。

「観客の前をね、歩いて行くの。
みんながあたしを見てるわ。ううん、見上げてるの。
そしてね、ため息を漏らすのよ」
 うっとりとした表情を見せる小夜子だが、茂作は困ったものだと首を振るだけだ。
「何はともあれ、お茶を用意しようかの。さあさ、ここに座るといい」
「ここにって、そこはお父さんの座る上座でしょうに」
「いいんじゃ、いいんじゃ、今日は小夜子がご当主さまじゃ」
 どうにも今日の茂作が分からない小夜子だった。
礼儀作法については厳しい茂作が、自らその禁を破っている。

「茂作さん、茂作さん。小夜子さん、戻ったんですね? 良かった、良かった」
 戸口から正三が息せき切って、駆け込んできた。
「あら、正三さん。お久しぶり」
 わずか三日のことなのだが、もう久しく会っていないような錯覚に襲われた。
「ああ、小夜子さん、ご無事の帰宅で何よりだ。茂作さん、ほんとに心配してみえましたよ」
「そうなの? 心配ないって、正三さんから聞いてたでしょうに」

「そりゃだめですよ。親心が分かってないなあ、小夜子さんは。
毎日学校帰りに寄りましたけど、その度に叱られました」
「そ、それはだな。お前の説明が悪いからじゃろうが。要領を得んから、怒ったんじゃ」
「でも、責任をとれえ! って、叱られたのは嬉しかったです」
「ば、馬鹿者!それは言葉のあやというものじゃ。本気にする奴がおるか!」
「それから学校の方には、病気だと妹に届けさせてますから。話を合わせてくださいね」

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