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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (五十三) 

2020年12月31日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 小夜子の顔色を伺う正三に、柔らかく微笑む小夜子だった。
口元を緩めて、突然小夜子が笑いだした。キョトンとする正三に、小夜子が言った。
「前田さんの予言通りね」
「何ですか、予言とは」
「ふふふ、正三さんがね、あたしの為にね、いろいろと骨を折ってくれてるって。
例えば家に毎日寄るとか、学校への連絡とか、って。
ね、すごいわよね、前田さん。でもありがとう、正三さん」
“どうしたことだろう、小夜子さんじゃないみたいだ。”

 小夜子の口から感謝の言葉が聞けるなど、まったく考えられない。
戸惑うばかりで、どうしても信じられない正三だ。
“何かあったのだろうか?”
聞いてみたい気持ちはあるのだが、その答えが恐ろしくもある。
「実はね、アーシアもね、そう思うわって。
アーシアと言うのはアナスターシアのことよ。
あたしには、そう呼んで欲しいんですって。
あのマッケンジーさんですら、呼ばせてもらえないのよ。
モデル仲間の数人だけなんですって」
「そりゃ、すごい! よほど、小夜子さんが気に入ったんだ。妹にしたいって、そりゃもう……」

 振り返ると、険しい表情の茂作が居た。思わず言葉に詰まってしまった。
もう退散時かと、腰を上げた。
「ほんとにありがとうね、正三さん」
 小夜子からの予期せぬ声かけに、グッと胸がつまった。
小夜子のひと言ひと言がこころに染み入ってくる。
これまでの正三の生活の中では決して得られなかった、大げさではなく、歓びの思いを感じさせた。
使用人たちからの畏敬の念やら学友たちからの賞賛にも似た視線で感じる羨望やらから得られない感情がわき起こった。

「そうそう、お土産があるの。アーシアからよ」
 戸口近くまで正三の歩が進んだところで、小夜子が声をかけた。
茂作には、あまり聞かせたくない小夜子だった。
「あなたのこと、アーシアがね、ハンサムボーイだって。
ハンサムの意味分かる? 好青年と言う意味よ」
「そんなこと……」
「何よ、喜びなさいな。世界のアナスターシアが言うのよ。嘘じゃないわよ」

“ほんとに信じていいのだろうか。いやそんなことより、小夜子さんはどう思ってる?”
「今度、話を聞かせてください。今日は、帰りますんで」
「ふふ、聞きたい? じゃまた、行く?」
“信じて良いのか? また足元を、すくわれるんじゃないか? 今日の小夜子さん、絶対におかしい”
「クク……大丈夫、もう意地悪しないから。アーシアのおかげで変わったの、わたし」


*コロナ禍から逃げ回り、粛々とした一日を送る一年でした。
ですが、たくさんの物語を皆さんにお届けできたということでは、良い一年だったかもしれません。
また来年も頑張ります。
遊びに来てくださいね。
新年は1月6日(火)スタートです。
では皆さん、良いお年を!

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