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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (五十一) 

2020年12月29日 外部ブログ記事
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 茂作の怒りようは尋常ではなかった。正三の予想の範囲を遥かに越えていた。
「なんのために付きそったんだ、お前は。小夜子の身になにかあったら、どうするつもりだ! 責任をとれるのか!」
 バンバンと床を叩き、正三を威嚇した。身を竦めながら、正三は必死に訴えた。
「大丈夫ですよ、何も起こりません。ぼくの命を懸けても良いです」

「ばか者! お前の命なんぞ、小夜子の指一本分の価値もないわ。
そのなんとか百貨店にしてもだ、本人が来てだ、頭を下げるのが筋だろうが!」
 なる程と、若干二十歳の正三も思った。
しかしその反面、通り一片の手紙で事足りると考えた坂田に、かく有りなんとも思えた。
田舎のいち年寄りの元に、有名百貨店の社員が来るわけがない。
片道四時間をかけてなど、望むべくもない。
顔を真っ赤にして怒る茂作の頭から湯気が見えるようだった。

 正三は「怒りが収まらないようだったら、これを見せて」と、小夜子から手紙を預かっている。
「茂作さん。小夜子さんから、これを預かってきました」
 小夜子、という文字を見た途端、茂作の表情が一変した。柔和な表情で、
「そうかそうか、小夜子からわしにのう。うんうん、小夜子の文字じゃのう」

 お父さんへ
 ありがとう! お父さん。小夜子、とっても嬉しいの!
 お父さんのおかげで、ステキな体験をしています。
 ステキなモデルさんとお友だちになれました。
 お父さん、大好き!                小夜子

 読み終えた茂作から大きなため息が洩れた。
「そうか、喜んでいるか。そんなに喜んでいるのか。
正三! ほんとに大丈夫なんじゃな。
何かあったら、責任取らせるぞ」
「大丈夫ですよ、茂作さん。
えっ!? 責任って、取ります。取らせて貰います。
ありがとうございます」
 床に頭をこすり付ける正三に、
「ちょっと待て。なんかあったら、のことだぞ」と、茂作が念を押した。

「大丈夫ですよ、きちんと責任取りますから。結婚させてもらいますから」
「だから、なんかあったらだ、と言ってるだろうが」
 しかし正三の耳には、入らなかった。
「そうですか、責任をね。それじゃ、そういうことで」と、上の空で辞した。
「まあのう、佐伯本家の跡取りでもあるし、良しとするかのう。
しかし小夜子にも困ったものよ。チャラチャラした娘にならんけりゃ、いいんじゃが」

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