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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (五十) 

2020年12月24日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 翌日、大勢の見送りの中、晴れ晴れとした表情のアナスターシアが居た。
はじけんばかりの笑顔を見せて、大きく手を振るその一挙手一投足に歓声が上がった。
アナスターシアも、感謝の意を込めて、四方八方へと投げキスを繰り返した。
マッケンジーの知る限り、あり得ない光景を目にしていた。アナスターシアの笑顔は、限られた場所・場面でしか見られない。
プライベートでは一切笑顔のないアナスターシアだった。

 楽屋で無表情な顔を見せていても、ライトの当たるステージに一歩を踏み出した途端に、瞳をキラキラと輝かせて笑顔を見せる。
グラビア撮影での不機嫌な表情が、カメラのシャッタ音・フラッシュの光を浴びた途端に笑顔を見せる。
しかし帰路につく折りには大きめの帽子にサングラスをかけ、時にはマスクをしてまで顔を隠す。
そしてそのルートは決して外には漏らしてはならない。

それが今日は、滞在しているホテルの公表を認めたばかりかマスコミをも呼び寄せることに同意した。
更には空港内においてもファンの見送りを受けることにも拒否反応を示さなかった。
「Unbelievable!」と、思わず漏らしたマッケンジーの声がその異常さを物語っていた。

「あぁあ、終わったわ。疲れるのよ、女性は。
我がままだしね、ほんとに。通訳してるだけなのに、当人じゃなくてあたしが怒られるのよね。
関係者ってさ、笑いながら怒るのよ。当人には『怒ってなんかいませんよ』って顔してさ。
あたしに文句言うの」

 アナスターシアが機中の人となり、三々五々に引き上げる人々を見つめながらこぼす前田だった。
大きくため息を吐いた後で、小夜子に対して感謝の言葉をつづけた。
「あしろこうしろって指図するときでもね、ハデなボディアクションなんかするんだけど、それが通じないときがあるの。
そうしたら『なんでわかんないんだ!』って、あたしには怒鳴るの。
そのときも笑顔を見せてるの。もう不気味。
といって直訳するわけにもいかないし、黙ってるのもおかしいしね。
困っちゃう。でも、今回は楽だったわ。あなたのお陰ね、ありがとう」

「とんでもないです。あたしこそ、ありがとうございました。
前田さんに引き止められてなかったら、こんな経験二度とできないと思います」
 深々と頭を下げる小夜子に
「えっと、正三さんだったかしら? 彼、離しちゃだめよ。
あんな良い人、そうそう居ないわよ。まあ、べた惚れみたいだからね。
彼だったら、あなたの意のままじゃない? 
もしも、もしももよ、アナスターシアとほんとに家族になるにしても、彼だったらOKじゃない?」と、片目をつむって見せた。

「ええ、まあ」
 ぽっと頬を赤らめる小夜子。今回のことで、正三に対する見方が一変した。
正三の優柔不断さに頼りなさを感じていた小夜子だが、それが正三の優しさとも思えた。
感謝しなくっちゃ、と思いもよらぬ言葉が頭に浮かんだ。

「みーんな、アーシアのおかげですね。
あたし、彼女に会って、ほんとに変わった、いえ変われた気がします。
気が強いばっかりの高慢ちきな女だったと、今回のことで気がつきました。
これからはやさしい女性になれると思うんです」

 小さくなっていく飛行機を眺めながら、アナスターシアが最後に告げた言葉を心の中で反芻していた。
「Sayoko,I love you.
So Iwant you to love me too」

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