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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (四十九) 

2020年12月23日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 灯りを落とした部屋で、窓から差し込む月明かりの中、三人並んで踊りだす。
窓に映るアナスターシアの真似をしながら、手をユラユラさせ腰をクネクネと。
流れる汗を拭くこともなく、ただひたすらに腰をくねらせている。

スローテンポに流れていたメロディが、突如激しいビートにのってアップテンポへと変わった。
ハワイの伝統楽器の一つ、パフと称される大きな太鼓の音が部屋中に響き渡る。
と同時に、アナスターシアの動きが烈しくなり、ゆらりとしていた腰のくねりが一気にヒートアップした。

小刻みに腰だけを動かし、肩の揺れは殆どない。
必死に連いていこうとするが、肩もまた烈しく上下左右に動いてしまう。
「うわっ!これ、きつい。ダメ、あたしもうダメ」と、前田がまず、ダウンした。
続いて「ああ、わたしもです。もう、ダメです」と、小夜子もダウンした。

ソファにへたり込んだ二人が
「すごいですね、アーシアは。体力が、まるで違いますね」
「ほんとねえ。あんな少しの食事なのに、ねえ」と、うなずき合った。

 アナスターシアのほとばしる汗が、床に落ちる。
恍惚とした表情が、次第に苦痛に歪み始めた。
かれこれ、一時間になる。とうに音楽は止まっている。
止まると同時に、またゆったりとした動きに変わった。
しかし少しの時間が経つとまた烈しいビートを利かせた動きになった。
そんな二つの踊りを繰り返している。
何かに憑かれたように、小夜子の目をじっと見つめながら、鳥たちの求愛行為と同じように続いた。

「おかしいわ、変よ」
「アーシア、止めて。もう、止めて」
「Stop,Stop!」
 懇願する小夜子だが、取り憑かれたように踊るアナスターシアには聞こえていない。
「身体を壊すわよ、やめなさい!」
 前田の絶叫に対し、思いもよらぬ言葉が、アナスターシアの口から洩れた。

「いいの、壊れても。小夜子、と、いっしょに、いられ、るわ、、、」
 息をゼェゼェと切らしながら、途切れ途切れに話すアナスターシア。
哀しげなその表情に、痛々しい苦悶の表情に、
「もういい、もういい」と、小夜子が抱きついた。
「おーけー、おーけー、よ」

 涙ながらの小夜子の言葉に、アナスターシアから憑き物が、ハラリと落ちた。へなへなと座り込んだ。
 小夜子の耳元で、アナスターシアが何やら囁く。
前田を見上げるが「ロシア語みたいね、わかんないわ」と、肩をすぼめた。

 ひとしきり泣いたアナスターシアは、小夜子をじっと見つめた。
吸い込まれそうな青い瞳に見つめられ、気恥ずかしさを感じる小夜子。
思わず、目をそらした。小夜子をしっかりと抱きしめて、ゆっくりと囁いた。
「ダスビダーニア!」

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