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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜  (四十五) 

2020年12月15日 外部ブログ記事
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 アナスターシアと小夜子、そして前田の三人は、百貨店が用意した打ち上げ会に参加することはなかった。
とにかく小夜子との会話を楽しみにするアナスターシアにとって、他の諸々のモデルたちにはまるで興味を覚えない。
というより、邪魔者ばかりだった。
なにかと話に割り込もうとするモデルたちが鬱陶しい限りなのだ。
「疲れたから」といらだちを隠そうともせずに、ホテルへと向かった。

 小夜子の前に並べられた料理に比して、アナスターシアの料理は如何にも少なかった。
怪訝な表情を見せる小夜子に、アナスターシアはにやかに微笑んでいる。
「小夜子さん、meに遠慮せずに食べて下さいって。
meのことは気にしないで、って言ってるわよ。
モデルはね、体型維持の為、カロリー制限しているの。だからあなた、気にせず食べなさい」
 でも、とためらう小夜子にアナスターシアがにこやかに言う。
「please!」
「ホラホラ。あなたが食べないと、アナスターシアが食べないわよ。あたしも食べられないし」
「分かりました、いただきます」

 食事中のおしゃべりの習慣のない小夜子は、黙々と食べた。
小夜子に話しかけようとするアナスターシアだが、目を伏せている小夜子に、拒否されているようで悲しい思いでいた。
アナスターシアのそんな思いに気付いた前田が、日本の習慣を告げると哀しげな目を見せつつ、頷いた。
 突然アナスターシアの表情が明るくなり、前田に日本語を教えてくれるようせがんだ。
「サヨコ,オフロイッショ.オーケー?」
 突然の日本語による問いかけに、目を丸くして小夜子がアナスターシアを見た。
「オーケー?」と、再度問いかけてくる。
「はい、もちろんです」と、返事を催促された小夜子は、大きく頷いた。

 円形の大きなバスタブに二人して入り、きゃっきゃっと嬌声をあげながら湯を掛け合った。
「肌が、ほんと白いわあ。うらやましい。それに、髪も金色に煌めいて、きれいだわ」
 うっとりと見つめる小夜子に、アナスターシアの手が伸びる。
小夜子の漆黒に輝く髪の艶に、にこりと微笑む。
指を滑らせ、肌のきめ細かさに感嘆の声をあげる。
言葉は通じなくとも、互いの目で意思の疎通を図った。

「彼の名前は?」「正三、佐伯正三と言います」
 二人の会話を前田が通訳すると、人なつっこい笑顔を見せた。
「あなたのボーイフレンド、お友達でなかったら、あたしのフレンドにしたいところだって」
 大きくバツ印に腕を組んで「だ、だめです。」と、 慌てて手をふる小夜子だった。
昨日までの小夜子ならば、アナスターシアに会うまでの小夜子ならば、笑って「熨斗を付けて差し上げますわ」と、答えたろう。
しかし今の小夜子には余裕がない。
アナスターシアに出会って、小夜子の鼻柱の強さも折れてしまった。
前田とのヒソヒソ話の後に、アナスターシアが「サヨコ,ケチンボー!」と声を張り上げ、大きく笑った。

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