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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜  (四十四) 

2020年12月10日 外部ブログ記事
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「あのお、お爺さんのことだと思いますが」
 恐る恐る正三が口を開いた。
何度か口を挟もうとしたものの、前田のあまりの剣幕に恐れを抱いてしまっていた。
小夜子ですら、気圧されているのだ。正三如きが、だ。
「えっ、そうなの? 迂闊だったわ。そうね、ご家族ね」
「小夜子さん、お爺さんと二人暮らしなんです。なおのことです」
 小夜子にとって、正三の助け舟がどれ程嬉しかったことか。前田が振り向くと同時に、激しく頭を振って頷いた。
「小夜子さん。僕が、茂作さんに伝えますよ」
「ほんと?」
 小夜子がすっ頓狂な声をあげた。

「じゃあ決まりね。そうね、坂田さんに事情説明の手紙をしたためてもらうわ。
あと、日当と今日のモデル料はあたしに任せてくれる? 
大丈夫よ、たくさん貰えるように交渉してあげる」
「そんなの、良いです。あたし、いりません」
「なにを言ってるの、貰えるものは貰わなくちゃ。お金は、大切よ。
まぁ、あなたぐらいの年齢では、遣うばっかりでしょうけどね。
お金を稼ぐというのは、そりゃもう大変なことなの」
 今にも噛み付かんばかりに、まくし立てた。

“これだから、田舎娘は。そんなお人好しじゃ、これからの日本では生きていけないわよ。
そっか、この子も、家庭という就職先に逃げ込むのね”
 睨み付けるアナスターシアに、交渉がうまくいってると告げた。
満足気に頷くアナスターシアにこれから「約束させるから、少し待って」と焦らすことも忘れなかった。
とにかく己を高く売らなければ、前田がいなければうまく事が運ばないと思わせなければならない。

「あのお、前田さん。お聞きしていいですか?」
「なぁに、どうぞ」
「その英語って、どうやって覚えられたんですか?」
「どこってそれは……。アメリカさんとお話しするのが一番かもね? ふふふ」と、意味深な含み笑いでごまかした。
「そうですか、アメリカさんと」と、思いつめた表情を見せる小夜子に、やさしく言えば良かったかしらと、後悔したが、「前田さん、ちょっと」と、スケジュール確認を求める坂田の呼び声に応えた。

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