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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (三十) 

2020年11月10日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 小夜子と正三が各駅停車の鈍行列車から降り立った時、十一時を少し回っていた。
プラットホームには大勢の人が立っており、人垣をかき分けて進まねばならなかった。
人混みを経験済みの小夜子に対して、正三は初体験だ。
圧倒されてしまった正三を無視して歩く小夜子に、慌てて後を追いかける始末だ。

「着きましたねえ。
ああ、いい天気だ。小夜子さんは、晴れ女なんですね。
ぼくは、曇り男らしいんです。
雨は降らないんですが、こんな風に晴れるということがないんです」

 興奮気味に話す正三に対して「そんなこと、考えたことありませんわ。そんなことより、行きましょう」とつれない言葉を返す。
うるさがられた正三は、意気消沈したまま小夜子の後ろに従った。
階段を上りきったとき、突然に小夜子の歩が止まった。
「正三さん、気が変わりました。お帽子は次の機会にします。
生バンド演奏をしている所に行きたいわ。探して頂けます?」

「は、はい。ええっと、どうすれば……」
 初めての場所で戸惑う正三に、苛立ちを隠すことなくぴしゃりと容赦ない言葉を浴びせかけた。
「もう、使えない人ね! 駅員にでも聞けばいいでしょ!」
「は、はい。今すぐに聞いてきます。」

 傍から見た二人は、お嬢さまと使用人だ。
顎で使うお嬢さまに対して絶対服従の使用人、といった構図だ。
しかし実態は違う。
正三は格式のある元庄屋佐伯家の総領であり、小夜子は竹田家の分家であり、小作人の娘に過ぎない。
村では決して許されないことだった。
そのことはお互いに分かっていることであり、この東京という地でのみ許される事なのだ。
いや、二人だけでの間のみ許される関係だ。

「あのお。連れの女性がですね、あっ、連れの女性は小夜子さんという名前なんですが…」
「あのね、私は掃除をしてるの。お客さんの相手なんかしてられないの。
分かる? だからね、他の者に聞いて。
はいはい。そこ、掃きますよ。どいてください」
 小夜子に振り回されている正三を侮蔑の目で見ていた駅員は、にベもなく正三を追い払った。

「ああ、もう! なんで駅員なんかに、軽くあしらわれるの! 官吏さまになられるというのに”
 小夜子の険のある表情に、正三は慌てて他の駅員を探した。
幸いに改札口からこちらに来る老駅員を見つけて、声をかけた。

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