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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (二十三) 

2020年10月22日 外部ブログ記事
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 舞台袖での騒ぎをご注進とばかりに、澄江に対する理不尽な物言いに憤慨をしていた座員の独りが座長に伝えた。
そしてそれを傍で聞いていた慶次郎が駆けつけた。
そんな騒ぎを聞きつけた世話役連に、娘たちはこっぴどく叱られた。
そしてその夜から、澄江の姿が消えた。

 まさかとは思われたけれども、娘たちが警察での取調べを受けた。
「お前ら、とんでもないことをしでかしたな。もう、一生、お天道さまを拝むことはできんぞ!」
 しかめっ面をしながら、駐在が怒鳴った。花束贈呈を家族に自慢していたのだが、娘たちがということで恥を掻かされたと周囲に愚痴っていた。「そんなことぐらいで」と後々に村人たちからの嘲笑を買ったものの、日頃の三人の娘たちが噴飯物の行動を取っていたため「いいお仕置きだ」と納得された。
「そ、そんなあ。あんなことぐらいで、そんなこと…」
「からかっただけだ、本気じゃなかったよ」
「ご、ごめんなさい。そんなに気にしていたの?」
 諸々の噂が飛び交う中、世話役連もあちこち連絡を取ることになった。とりあえず、バス会社や鉄道会社へ問い合わせをしてみた。返事は当然のことながら、木で鼻をくくったような「それは、分かりませんなあ」だった。そして最後に連絡を取ってみたのは、あの芝居一座だった。
「そちらにですの、あの花束を渡しました娘がおりませんでしょうか」
 すぐに「居ませんよ」と返事があるものと思っていたが、暫く待たされて「居ませんな」と、返事が帰ってきた。
「そりゃ、おるぞ。澄江ちゃん、おるぞ」
「いやいや。念を入れて確認してくれたんじゃろ」
 何にしろ、居ないと言われれば仕方のないことと収まった。初めの内こそ同情的だった村人も、三日そして一週間と日が経つにつれ、村の角々でコソコソ話が花開いていた。
「こりゃ、家出じゃろ」
「ほうじゃのう。毎日が泥まみれの生活だったんじや。若い娘には耐えられまいて」
「うんうん。あの芝居を見て、ふらふらとなったんじゃろ」
 一人で澄江を捜し回った茂作も、ひと月が経った頃には皆の言う「家出」という文字が頭に住み着くようになっていた。
「戻ってきてくれ、澄江。怒らんから。いつでも、いい。とにかく、戻ってくれ」
 毎朝仏壇に手を合わせて、澄江の無事を祈る茂作だった。

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