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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (二十五) 

2020年10月21日 外部ブログ記事
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「さあ、さあ。腹は空いてないか? ご飯なら、たくさんあるぞ」
「ぺっこ、ぺこ。朝から、食べてないの」
「よしよし。すぐに用意しょうな」
 囲炉裏端に澄江を座らせて、いそいそと土間に下りた。
かまどの火を起こしながら、澄江に声をかけ続けた。
そうしなければ、今このときが夢幻の如くに消えてしまうのではないか、そう思えた。

「元気してたか?」
「さっき、聞いたじゃないの。変なお父さん」
「さあさあ、できたぞ」
 ほかほかと湯気の立つ味噌汁に、菜っ葉の味噌和えを添えてあった。
「さあ、食べい。お代わりしていいぞ、たんとあるからの」
「おいしい! お父さんのお味噌汁は、いっつもおいしい。澄江には、出せない味だね」
「うんうん。味噌汁だけは、わしの自慢じゃでの」

 口いっぱいに頬張りながら食べる澄江を、目を細め愛しげに見つめる茂作だった。
(間違いない、わしの元にもどってくれた)。
やっと確信が持てる茂作だった。
「おいしかった。生き返ったわ。ありがとう、お父さん」
「もういいのか? まだ、たんと残ってるぞ」
「ううん、もうお腹いっぱいよ」
 膨れたお腹をさすりながら、破顔一笑の澄江だった。

「心配かけてごめんね、ごめんね」
 澄江の甘えるような声に、思わず目頭を押さえてしまった。
醜態だと顔を横に向けたが、澄江もまた大粒の涙をこぼしていた。
「いいんじゃ、いいんじゃ、もういいさ。もう泣くのは終わりじゃ」
「うん、うん。もう泣かない。実はね、慶次郎さんと一緒だったの
。お父さんには悪いと思ったけど、ふっと魔が差したのね。
畑仕事がイヤになってたの。『ついておいで』って、慶次郎さんが言ってくれて。
それでふらふら…と」

「うんうん、やはりそうか。うんうん、わしも悪かった。
みんな、着飾って遊びに行くのにの。お前には野良仕事ばっかりさせての」
「ううん。お父さんが悪いんじゃない。澄江のわがままよ」
「いやいや、わしが悪い。すべて、わしが悪い。
ミツの時もそうだ。やっぱり初江さんにお願いすれば良かった。
そうすればミツも、あんな死に方をせんでも済んだものを」
「お母さんのことは言わないで。お父さんのせいじゃない。誰のせいでもないわ」

 互いに抱き合いながら、互いをかばいあいながら、互いに泣かないと言いながら、夜も更けていった。
「で、どんな暮らしをしてた? 幸せだったか?」
「うん、幸せだったよ。慶次郎さんも良くしてくれて」
 澄江の声が、次第に沈み声も小さくなった。
「どうした、どうした。何があった? 帰ってきたのは、何かあったからか?」
「ごめんね、もう大丈夫。順を追って話すね」

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