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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (十八) 

2020年10月13日 外部ブログ記事
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「そんなにビックリなさらないで。祖父もね、『なんで東京なんだ!』と、わたくしを詰りましたわ。
でもね、東京じゃなきゃダメなんです。
この間、祖父と生バンドのジャズを聞いてまいりましたけど、その時に見つけたんです。
すごくステキなお帽子を。もうね、わたしにね『買って、買って!』って。
そのお帽子が言うんです」
 哀しげに言う小夜子の表情は、この世の不幸を一身に背負うが如くに見え
た。
「分かりました。ぼく、お供しますよ。小夜子さんお一人で東京へ出かけられるなんて、絶対ダメです。
茂作さんのご心配もごもっともです」
 小夜子の描いた絵図に、見事にはまった正三だ。
「およろしいの?」
 思いっきり甘えた声をだす、小夜子だった。
「なあに、ぼくも近いうちに行こうと思ってたんです。
郵政省の官吏になる予定なので、ついでに下見をしますよ。い
いきっかけだ。それに小夜子さんのお供ができるなんて、光栄の至りです」

 官吏という言葉に、思いっきり力を込める正三だ。
この町で、本庁の官吏になった人間はいない。
いや、県庁勤めすらいない。大人たちの間で評判になっているのだ。
「さすがに、佐伯家の正三坊ちゃんだ」
「そうよ、そうよ。さすがじゃて」
「しかしの、叔父の源之助さぁの引きだってことだろが」
「だから、さすがに佐伯家じゃちゅうことじゃろが」
「そうよ、そうよ。さすがじゃて」

 寄り合いの場で、繰り返される問答だ。
佐伯家の誉れであり、正三のプライドをくすぐる証左でもある。
そして今、小夜子からの尊敬の念を受け取るべき瞬間なのだ。
高鳴る胸の鼓動が、正三には嬉しくもありくすぐったくもある。
その反面、小夜子に聞かれはしないかと不安でもある。
さあ、今だ! 動き始めた小夜子の唇に正三の全神経が集まった。

「そう、官吏になられるの」
 正三の思惑とは違い、小夜子の反応は冷たいものだった。
「すごいですわね、さすが正三さんだわ」と、感嘆の声が聞けるものと思っていた正三だった。
しかし小夜子はつゆほども反応しない。
“ぼくの言った意味が理解できていないのか?”混乱する正三だが、精一杯の言葉が浮かんだ。
「はい、村では初めてのことです。家族も大騒ぎして、、、」
 誇らしげに胸を反って答えるが「進学されるものと思ってましたわ」と、途中で言葉を遮る小夜子だった。

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