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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (十三) 

2020年10月01日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「こいつは、辞めたくないんです。こいつ、社長に、とことんほれぬいているんです。
もちろん、ぼくら二人もそうですから。もう、死ぬまで付いて行くつもりなんですから」
「そうだ、そうだ! 付いていくぞ、俺も。
それにしても、竹田の奴もかわいそうです。稼いだ金の大半を、占い師やら祈祷師やらに吸い上げられているんですから。
『不浄の金を持っていてはいかん。治るものも治らなくなる!』なんて、言われて」
「竹田! お前の気持ちは、どうなんだ?」
「辞めたくないです。ぼく、この仕事、好きですから」

 五平の問い掛けに対し、竹田は即座に答えた。
黙って聞いていた梅子が、五平に向かって
「五平ちゃん、それはあんたの仕事でしょうが。
そうか…だから社長、今夜は欠勤したんだよ。
あの社長なら、怒鳴りつけてるわよ。『そんなウジウジする奴なんか、辞めちまえ!』って」
 と、詰め寄った。

「そうか、分かった。後は、俺に任せろ。
その占い師と祈祷師の名前を、後で教えろ。話を付けてやる。
大丈夫だ、任せろ!」
 裏の世界に人脈を持つ五平の言葉だけに、説得力があるものだった。
「だから言ったろうが。専務に話せば、何とかしてくれるって。
それをこいつは、『社長に知られたら、会社を辞めさせられる』なんて、心配しやがって」
「そうだよ! 何度忠告しても、渋りやがって」
「これで、気が晴れました。専務、お願いします。
ぼく、ホントに辞めたくないんです。
お金の問題じゃなく、この仕事を続けていきたいんです。よろしくお願いします」
 ソファから降りた竹田が、床に頭を擦り付けて嘆願した。
「分かった、分かったよ。社長は、お前たちに期待しているんだ。
もう、座れ。よし、これから、パァーッと騒ぐぞ」

 フルバンドによる演奏がダンス音楽に変わり、中央のホールに男女が集まり始めた。
しかし三人の若者たちは、女給たちとじゃんけんゲームに興じている。
 五平は馴染みのミドリと共に、いつものようにホールを踊り渡る。
他のボックスに目を流したその中に、場違いな二人連れを見つけた。
初老の男性と共に、白いブラウス姿の幼さが残る娘が居た。
「おい! 場違いな女が居るな? 女給じやないな」
「家族らしいわ。女給は、要らないんだって。
孫娘がおねだりしたらしいわ、キャバレーに来てみたかったんだって。
どういうの、それって。都会に憧れる田舎娘かしらね」

 クリクリとした目を持つ、愛くるしい娘だった。
興味を覚えた五平は、無理矢理ミドリを誘導しながら、その娘の品定めを始めた。
髪をおさげに結った田舎娘だった。どうやら女学生のようだ。
キラキラと目を輝かせながら、バンドの演奏に聞き入っている。
背格好は、座っているが為に判然とはしないが、均整の取れたスタイルに見えた。
首が長く、全体に細身のようだ。
“武さんに良いんじゃないか。惜しい! 無理にでも引っ張ってくれば良かった”

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