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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (十二)   

2020年09月30日 外部ブログ記事
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“それにしても先祖供養は大事なもんだ。特に墓参りは、しっかりとしなくちゃな。
戦争から無事に帰れたよって、報告しただけなのに。
婆ちゃんのおかげかな、トーマス軍曹と知り合えたのは。
それにしても、GHQの高官たちの通訳だとは、まったく付いてたぜ”。

 感慨に耽っていた五平の肩をぽんぽんと叩いて、野太い声の梅子が若い女の子を連れてやってきた。
「遅くなっちゃった、ゴメンね。あれ? 五平ちゃ〜ん、社長はどうしたの」
「おゝ、ウワバミ梅子が来たぞ! 社長はな、梅子が恐いから欠勤だとさ。飲み比べで負けたから、もう来ないとさ」
「何だい、あの根性なしが! ほらほら、英子、入っていきな。鈴、お前そっちだ。
それから、花子に昭子、男どもの間に座らせて貰いな。
それにしても、このボックスは狭いな。もっと広いボックスが有るだろうに。
ははあ、さては。こら、五平。お前の策略だな? 
よっしゃ、それじゃ体重の軽い女は、男どもの膝に乗っちまえぇ! 
英子、それから陽子、お前ら乗りな」

 肩紐のないドレスに身を包んだ女給五人が、それぞれに入り込んでいく。
てきぱきと取り仕切る梅子を、五平はニタニタと見つめた。
三十を過ぎた姉御肌の梅子は、この店の女給達のまとめ役を勤めている。
「ほら、ほら。そんなにかしこまるなよ。女性陣、こいつら初めてなんだ。可愛がってやってくれ」
「あらあ、そうなの」
「お姉さんに、任せなっ!」
「よ・ろ・し・く・ねっ!」
 科を作る女給たちに、ようやくのことに竹田以外の二人は緊張の糸が切れた。
他の客たちのように女給の肩に手を回し、早速に話に興じ始めた。
しかし竹田だけは、手を膝の上で結んだまま俯いていた。

「竹田、どうした。ここでは、姉さんのことは忘れろ! パアーッと、行け!」
 五平のそんな言葉にも軽く頷くだけで、相変らず無言だった。
隣に座ったホステスが、あれこれ話し掛けても相槌を打つだけで、やはり無言だった。
「おっと。こっちの若いお兄さんは、どうしたんだ? 元気ないじゃないか。
悩み事か? この梅子姉さんに話してみな。一発回答してやるよ」
 竹田の首に手を回して、胸の谷間に顔を埋めさせた。
途端に、他の二人も「ああ、俺もして欲しいぃ!」と、嬌声を上げた。

 無言の竹田に代わって、服部が口を開いた。
「姉さんのことなんです。病気なんです。うさんくさい占い師のお告げがあったとかで、責められているらしいんです」
 坂本が続けた。
「こいつ、会社を変われ! って、言われてるらしいんです。それがいやなら、会社の、、、」
「不浄な会社だから、給料も不浄だって。だから姉さんの病気も治らないんだって、、、」
「だから給料を差し出せって、言われてて」
 代わる代わるの二人の思いもかけぬ話に、五平が身を乗り出した。
「竹田、本当なのか、それは」
「はあ……」
 ため息混じりに、竹田が頷いた。

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