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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 〜第一部〜 (十一) 

2020年09月25日 外部ブログ記事
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 ハイヤーに乗り込んだ五平は、「銀座だ」と、告げた。
「うひょお! 銀座だって、おい豪勢だぜ、銀座だぜ」
「ということは…ひょっとしてナイトクラブとかですか」
 大騒ぎする二人に、五平は慇懃に答えた。
「あゝ、そうだ。社長に頼まれたのさ。お前達を遊ばせてやれ、とな。今まで頑張ってくれたからな」
「感謝感激、だ! なあ、竹田。おい、どうした? 元気がないぞ! 姉さんか?」
「あゝ……」
 竹田の力無い声が、五平の耳に届いた。
「姉さんがどうした? 嫁にでも行くのか?」
 五平の軽口に、山田・服部の二人は苦笑した。しかし、竹田は沈んだ表情のままだった。
「なんだ、どうした?」
「いえ、何でもないです」
「竹田、話せ話せ。入院されたろうが」
「そうだぞ。もうお前だけでは、手に負えないだろうに」
「で? どこの病院なんだ」
「近くのかかりつけ医者です。診療所みたいな所です」
「馬鹿野郎! なんで、大学病院に入れないんだ! 
何をケチってるんだ、お前は。しっかり貰ってるだろうが」
 五平の大声に、運転手がビクリと体を震わせた。
「こりゃすまん、運転手さん。ここで良いよ。停めてくれ」

 立ち並ぶビル群の一角に、それはあった。煌々と輝くネオンの看板を、三人は等しく眩しく見上げた。
三人にとって、ここ銀座は異世界だった。
すれ違う人の多くは進駐軍の兵士で、日本人を見ては薄ら笑いを浮かべ蔑視した。
中には大声を張り上げて唾棄すべき言葉を発する者もいた。
 シャッターの下りた軒先でたむろしていた街娼は、兵士にしな垂れかかるようにして媚びを売る。
辺りもはばからずに口を吸いあっている街娼もチラホラ居た。
「あの娘らを、見ろ。明日の糧のために操を売っているんだぞ。
チューインガムやらチョコレート欲しさでだ。
そしてそんなあいつらから、俺たちは商売の種を回させているんだ」
 五平にば、戦前の女衒時代が思い出されてしまう。
“未だ、あの頃の方が良かったかもな。苦界に落ちるといっても、日本人が相手だった。
然も、公娼制度という政府の保護下にあったことだし”。
 そんな感傷に襲われた、五平だった。

「くそっ、アメ公の野郎が! 戦勝国だからって、好き勝手しやがって!」
「見てろよ! その内、こっちがアメリカで女を買ってやるからな」
 山田・服部の二人が、口々に罵った。しかし竹田だけが、ポツリと呟いた。
「そんなアメリカさんのお陰で、俺たち、稼げるんだよな」
「そりゃ、そうだけどな。しかし、腹が立たんのか」
 山田が、竹田に噛み付いた。服部も「うん、うん」と頷いた。
「竹田の言うとおりだ、今はな。日本全体が、アメリカさんのお情けで、生き長らえているようなもんだ。
しかし、気持ちでは負けるなよ! 山田の言うとおり、アメリカに乗り込んで、女を買う位の気概を持て! 
その為にも、ガムシャラに働くんだ。たんまりと、稼ぐんだぞ」
 と、五平の檄が飛んだ。

「Hi,gohei! 」
 後ろから声を掛けてくる、兵士が居た。振り返ってみると、グラマーな女にしてくれと、しつこくせがんだ将校だった。
三人目で、やっと納得したオンリーを連れている。
日本人女性には珍しい、肉感的な女性だった。もう面接時の、おどおどした態度はまるでなかった。
「うまく、やってるか?」
「ふふ…お陰さまで」
 妖艶さを漂わせながら、キツネの襟巻きを首に巻いている。着物姿の女性が多い中、体にフィットした洋服姿だった。
「Good lover?」
 女性の愛人を現すloverを誤用した五平の問いかけに苦笑しつつも「Sure!」 と答え、腰に手を回して熱い接吻を見せつけた。
「Good! and bye!」
 軽く将校の肩を叩き、五平は三人を促して店に入った。

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