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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 〜第一部〜 (十) 

2020年09月24日 外部ブログ記事
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 そして今日だ。昨日の雨が嘘のように晴れ上がった日、五平が武蔵に注進した。
「社長。今夜辺り、銀座でもぶらつきませんか。ほら、先日お話しました件ですよ。
そろそろ、催促が入りそうなんですが」
「うん? あゝ、あのことか。五平よ、今夜じゃないとだめか? 
少し先に…そうだな、来週じゃだめか? どうも最近、疲れやすいんだ。
あのやぶ医者がな、『少し休息をとりなさい』ってな。
だから、今夜は休肝日にしようかと、思ってるんだが」
 武蔵の弱気な言に、五平は驚いた。どれ程の危機に陥っても、なにくそ! と立ち向かった武蔵の言とは思えなかった。
五平の、いつもの心配癖がむくむくと頭をもたげた。
“余程のことだな。いま、武さんに倒れられる訳にはいかんぞ”

 新橋闇市から抜け出して、日本橋に店を構えてから三ヶ月ほどだ。
社員も今では十人の余を数える迄に膨れ上がっている。これから、という時だ。
「分かりました、社長。それじゃ、来週にしましょうか」
「でな、五平。今夜は、あの三人を慰労してやってくれ。頑張っているようだからな」
「分かりました、そうしましょう」
「それと竹田のことだ。毎月、ピーピー言ってるみたいじゃないか。
時々二人に、昼飯を奢られてるみたいだしな。家族問題じゃないか、と俺は思ってるんだが」
「竹田のこと、ご存知でしたか。気にはしてたんですが、つい忙しさにかまけまして…」
「聡子に話しておくから、軍資金はたっぷりと持って行ってくれ。
飛びっきりの所へでも、連れて行ってやれ。
金の使い道に困ってるだろう、あいつ等は。俺たちと違ってな」

 三人を引っ張り出したとき、どっぷりと日が暮れていた。
伝票整理に追われてしまい、五平自身の仕事が片付かなかった。時計を見ると、八時近くになっていた。
「五平、いい加減に切り上げろよ」
 武蔵に声を掛けられてから、一時間近く経っていた。
山田、服部の二人は、これからのことを色々と詮索しあっては、ニタニタと笑っている。
しかし竹田だけは、何やら電話口で深刻そうな表情をしていた。
「済まなかったな、遅くなって。それじゃ、行くか?」
「はいっ! お供します」
 二人は大声で応えながら、すぐに立ち上がった。
竹田も慌てて受話器を置くと、席を立った。
そして五平の前に、「これ、電話代です…」と、小銭を置いた。
「そんなもの、構わんさ。今まで、待たせてしまったんだから」
「いえ。私用の電話ですから…」
「律儀な奴だな、お前は。さっ、それじゃ行くぞ!」

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