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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 〜第一部〜 (九) 

2020年09月23日 外部ブログ記事
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「しかしね、社長。最近、アメリカさんのご希望が変わってきました。
『言葉が通じなくてもいいから、グラマラスな女にしろ!』ってね。
どうしたって今の日本でグラマーな女というのは、少ないですからねえ。
そこで、待ってるだけじやなく、打って出ようかと思うんですが」
「と言うと?」
「でね、社長の出番なんです。どうもねえ。このあたしじゃ、声をかけても逃げられそうで。
お願いしますよ、社長。社長と一緒なら、女も話に乗ってくる筈ですから」

 五平は、社長である武蔵を立てる。仕入れに関しては、武蔵は不要である。
取引は、全て五平が段取りを付けている。しかし、販売となるとそうはいかない。
海千山千の、ブローカー相手である。中には、愚連隊と繋がりを持つ者もいる。とてものことに、さばけるものじゃない。
騙されたり、脅し取られたりするのが関の山だ。
そのたびに総元締めの元に駆けつけるわけにはいかない。謝礼という文字がつきまとうのだ。

 武蔵は、五平が居なくては物資の調達がうまく行かない。
これ程の量は、望むべくもない。二人三脚でなくては、成り立たない。
といって、欲得だけの繋がりではない二人だ。親兄弟以上の、強い絆で結ばれている。
そしてまた最も重要な事は、五平が武蔵にぞっこん惚れ込んでいることだった。
そしてそんな親分肌の武蔵を慕うのは、一人五平だけではなく他の社員たちもであった。

 夜が明けると同時に仕事に入り、どっぷりと暮れるまで動き回る。
男性社員は全員、会社に寝泊りした。自宅に帰るのは、月に一度あるかないかだった。
女子事務員だけは、社長である武蔵が送迎した。と言っても、実のところは武蔵の愛人だった。
しかし、こと仕事に関しては、愛人と言えども容赦はなかった。
他の社員同様、少しでも手を抜けば烈火の如くに怒った。
「儲けの三割は俺が貰う。五平にも三割だ。残りの四割は、お前達に分配してやる。平等に、だ。
死に物狂いで働け。儲かれば儲かるほど、お前達の実入りも良くなる。
但し、サボる奴は即、辞めさせる!」

 設立から一年が経った今も、一つの儀式が続けられている。
毎月末になると、机の上にうず高く札束を積み上げてみせた。
そして、仕入れ用の金員を金庫に仕舞い込む。
それから残った札束を、それぞれに振り分けた。
「みんな、良く頑張った。今月は、いつにも増して儲かったぞ。
それぞれ壱千円の大台に乗ったな、ご苦労さんだった。
聡子! お前は、今月減給だ。計算間違いを幾度となく、やった。
三割減給する。その分を、山田・服部・竹田の三人に渡せ。いいな!」

 有無を言わせぬ武蔵の言葉に、聡子はただ小さく頷くしかなかった。
「いいか! お前たちも、気を抜くなよ。ミスをしたら、減給だ。
勿論、俺にしろ加藤専務にしろ、同じだ。
いや、俺達の場合は五割の減給だ。大きいからな、損失が」
「分かっております、社長」
 五平が答える。しかしそんな武蔵の言葉も、彼ら三人の耳には届いていなかった。
毎月末の恒例の事ではあるのだが、目の前に積み上げられた札束に、目を奪われていた。

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