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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 〜第一部〜 (五) 

2020年09月10日 外部ブログ記事
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 顔役との顔つなぎ終わった後には、五人の男たちが膝を曲げて腰を落とし「ごくろうさまでございました」と、往来にも聞こえるほどの声で、二人を送り出した。
二人を睨み付けていた男などは、外に出た武蔵がパナマ帽をかぶり直すまで見送り、自身も外に出て、再度「おつかれさまでした」と声を張り上げた。
 トラックの行き交う中、土埃の上がる道を二人並んで歩いた。
まだ胸の動悸の収まらない五平だったが、武蔵は今にも口笛を吹きそうに口をすぼめている。
「武さん、さっきはどうだったんで? こっちは冷や汗の掻きっぱなしでしたよ。なのに平然とした顔で」
 思わず武蔵に確かめた。

「俺だって緊張してたぜ、顔を合わせるまではな。
けど、ヒヒ親父だと思わなかったか? 動物園にいる、あのマントヒヒに似てたじゃねえか。
思わず吹き出しそうになったぜ。
それに、かわいいもんだぜ。葉巻を手に持つのは良かったけど、煙草みたいにスパスパやるもんじゃねえよ。
あれは口ん中で煙の香りを楽しむもんだ」

 今にも大笑いしそうに話す武蔵を見た五平は、
“とんでもねえお人だ、武さんは。足下にも及ばねえよ、このおれっちは。胆力がまるでちがう。
いやいや、分かってたはずだ。軍隊時代の武さんを忘れちゃいけねえや”と、その場に座り込み、
「武さん、いや社長。おれっちを見捨てねえでください。この先ずっと、ついて行きやす」と土下座して懇願した。
「いいかげんしねえか!」と五平の手ををとり「二人三脚で行くんだよ。それからそんな口の利き方はやめろ」と五平の肩を何度も叩いた。

 帰りの道々、五平が「武さんよ。また、行くんですかい? 
お足を包んで、一回で済ませてみても良かったと思うんですがねえ。
どうも、あの手の人間は苦手なんでね。
女衒の頃に、何度となく煮え湯を飲まされてるものだからさ。
テキ屋だ何だと言っても、所詮は愚連隊上がりでしょうに」と、こぼした。

「俺もそれは考えた。だがな、五平。俺たちの物は、そんじょそこらじゃ手に入らないものだ。
殆んど市中に出回ってないものばかりだろうが。当然狙ってくる奴が、出てくる。
そんな時にだ、顔役の後ろ盾があるとなりゃ、おいそれとは手を出してこない」
「そりゃそうでしょうが…。
けどそこまで、我々に肩入れしてくれますかね。いや、どころか、あの親分が…」

 どうしても五平には信じられない。
どんなに金を包んでも、すぐに脅しをかけてくる。
複数の相手に話を通さなければならない羽目に陥ったこともあった。
苦々しい思いが、どうしても消えない五平だった。

「馬鹿なことを言うな。だから、GHQの名前を出したんだろうが。
肩入れにしたって、金次第だろうな。
なあに、見てろ。でっかい花輪が届くよ。でっかいのが、な」
「届きますかねえ、大きいのが」
「届くとも。店を開けたら伺う、って言ったんだ。
その時にたっぷりとお持ちしますよ、ということだ。
それが分からねえような唐変木なら、こっちが願い下げだ」

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