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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 〜第一部〜 (三) 

2020年09月09日 外部ブログ記事
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 新橋の地で焼失を免れた木造の商家を前にして、ガクガクとした体の震えを抑えきれない五平だった。
隣に立つ武蔵からもピリピリとした緊張感が伝わってくる。
奥歯をぐっと噛みしめて握りしめられた拳が、心なしか震えている。
五平のひりつく喉から絞り出された声が、「今日はやめますか」という言葉が、掠れてしまう。
「馬鹿言うな、今日をやめたら二度と来れるもんか」と、武蔵もまた掠れた声になった。

 ガラス戸から見える中では、屈強な男たちが五人居る。
その中で二人がテーブルを挟んで額を付き合わせている。
その後ろにそれぞれに一人が立ち、一人が外をじっと見ている。
いぶかしげな表情を武蔵と五平に向けている。
このままこの場に立ちすくんでいては、早晩男が飛び出してくることになる。
意を決した武蔵が、パナマ帽を軽くあげて頭を下げながらガラス戸に手をかけた。

「なんだ、こりゃあ!」と、武蔵たちを睨み付けていた男が立ちはだかった。
ソファ後ろの男二人も気色立つ。
さすがにもう二人の男たちは、怪訝そうな表情で座っている。
「先ほどご連絡を入れました、御手洗と申します。親分さんへのご挨拶に伺いました」
 体をピンと伸ばし張りのある声で、奥の部屋にいるであろうこの屋の主へ届けとばかりに声を上げた。

「おう! お入りなさい」
 しわがれた声が、しっかりと武蔵と五平の腹にドスンと入ってきた。
武蔵たちを威嚇した男が、膝を曲げ腰を落として「どうぞ、こちらへ」と、奥の部屋へと誘導した。
しっかりとした仕切り板の横を抜けると、壁のあちこちに動物たちの剥製が飾られていた。
大きな角を持つ鹿の頭に、ギョロリとした眼光鋭い虎の頭、そして重厚感のある机の前には革張りのソファが並べておいてある。
武蔵たちの度肝を抜いたのは、床に虎の全身の敷物があることだった。

 靴を乗せることをためらう二人に対し、小柄で痩せた風体の老人が「さあさあ、お座りなさい」と、鋭い眼光を穏やかな表情に隠して指さした。
「先日は大変に貴重な物ばかりいただいて、ありがとう。
孫たちが大喜びしましてな、わたしの株も上がったものですよ。
それに奥も喜んでおります。
今度拙宅にもいらっしゃいな、歓待しますよ」

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