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敏洋’s 昭和の恋物語り
ツバメのたび 童話集 第1章:仔牛の子守唄
2020年04月15日
テーマ:テーマ無し
童話を書くきっかけは、『ドナ・ドナ』という曲を聴いてからでした。
♪On a wagon♪と始まるその歌に感銘を受け、辞書を引きつつ和訳しました。
初めは和訳詩をと、考えたのですが、物足りなさを感じて「童話」に仕上げました。
(一作だけのつもりが、気が付いたら七作品になりました)
−−−−−−−−−−−
仔牛の子守歌 (洋版 ドナ・ドナより)
しずかなしずかな田舎みちを、もう八十にちかいながーいおひげのおじいさんにつれられて、首をうなだれてかなしげにあるく仔牛がいました。
おじいさんは、ときおり仔牛を見てはなみだをこぼしました。
仔牛も大つぶのなみだをこぼしていました。
みちばたにさく名もない花も、おじいさんと仔牛のそのすがたに、かなしくしおれきっていました。
すぐかたわらの小川のせせらぎの中では、かえるたちがのどのうがいをしながら、いっしょうけんめいうつくしいこえにかえようとしています。
なぐさめようとしているようです。
しずかだったこのでんえんも、そのなき声でさわがしくなりました。
おじいさんはいっぽいっぽ、いちばにつづく道をあるいていきます。
子牛はだまってうなだれて、おじいさんについていきます。
とちゅうで、おじいさんは少年にあいました。
なにやらしんこくなかおつきでひとことふたこと話をすると、いくらかのぎんかを少年にわたしました。
少年は、そのぎんかをうけとるとよろこびいさんではしりだしました。
おじいさんは、少年のはしっていくうしろすがたに「うん、うん」とうなずきました。
いちばのなかをとおりぬけ、少しはなれたばしょに牛のとさつじょうがあります。
おじいさんはかわいいセバスチャンの病気をなおすために、仔牛をうることにしたのです。
お医者さまにみてもらうおかねや、たかいお薬をかうためです。
おじいさんは、神さまになんどもおねがいしました。
きょうかいにでかけてはキリストさまやマリアさまにおいのりしました。
ぼくしさまにもお話をきいてもらいました。
しかし、セバスチャンの病気はおもくなるばかりです。
とほうにくれたおじいさんは、しかたなくたった一つのざいさんの仔牛をうることにしたのです。
さきほど少年にわたしたぎんかは、仔牛のだいきんでした。
仔牛も、大好きなセバスチャンぼうやのためにとなっとくしました。
仔牛のお父さんもお母さんも、このおじいさんにかわいがってもらいました。
いまこそおんがえしのときだとおもったのです。
でも、そらをじゆうにとぶとりたちをみると、「じゆうにそらをとびたいなあ」とおもってしまいます。そして、じぶんのひうんをなげきました。
でこぼこのみちにさしかかったとき、おじいさんがやさしいこえでいいました。
「もうすこしだから、がんばっておくれ」
仔牛はげんきいっぱいのこえで、「モー(だいじょうぶ)!」とこたえました。
おじいさんは、「うん、うん」とうなずき、子牛のあたまをなてであげました。
ようやくでこぼこみちをぬけて、たいらなみちになりました。ホッとした子牛がそらをみあげると、ツバメがまわっています。仔牛がツバメにいいました。
「あんたはいいねえ、じゆうで」
「あんたはいいねえ」と、ツバメはこたえました。
「どうしてだい、ひにくかい?」と、仔牛。
「あんたはいいよ、あたまをなてでもらえて」と、ツバメはいいました。
「あんたはいいよ、じゆうだから。ぼくは、これからうられていくんだ。ころされるんだ」と、仔牛はなみだぐんでいました。
「それでも、こんどうまれてくるときはあんたになりたいよ」と、ツバメはいいました。
「ぼくは、あんたにうまれたかった」と、仔牛はこたえました。
「でもね、ぼくはだれのせわにもなれないんだよ。
おなかがすいてもだれもたべものをくれないんだ。
じぶんでみつけるしかないんだ。
あんたは、『おなかがすいたー』っていえば、おじいさんからもらえるだろう。
それにね、あめがふっていてもかぜのつよいときでも、ぼくはとばなければいけないんだ」と、つばめはいいました。
「だけど、あんたはじゆうだ。どこにでもいけるじゃないか。それにひきかえぼくは、これからころされるんだ」
ツバメと仔牛の口げんかは、いつまでもつづきました。
あるくにのおうさまのはなしです。
そのくには、おうさまのけんりょくがつよいところでした。おうさまが「だめだ」というと、なにごともすすめられませんでした。
ある日、おうさまはこじきをよんでたずねました。
「おまえは、わたしがうらやましいか? わたしは、おまえがうらやましいぞ」
こじきは目をまるくしていいました。
「なにをおっしやられます。
わたしはおうさまがうらやましいです。
おいしいごちそうをたべ、たくさんのめしつかいたちをつかわれ、なによりあたたかいおふとんのなかでねむることができるのですから」
「いやいや、おうさまはきゅうくつだ。
いつもおまえたちがしあわせにくらせるようにと、かんがえねばならぬ。
たこくからのしんりゃくのときには、おおくのへいしにめいれいをださねばならぬしの。
それにいつ、どうめいこくのうらぎりにあうかもしれぬのだ。
きがやすまるときがない。
やはり、おまえがうらやましい」
とさつじょうから、おじいさんがたったひとりででてきました。
かたをおとして、しょんぼりとしています。
そらのうえを、ツバメがとんでいます。
くるりくるりと、なんどもとんでいます。
そのとき、きょうかいのかねがなりひびきました。
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