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蝉の声　

2019年08月06日
テーマ：一人暮らし

酷暑が続いて、生活にエアコンは欠かせない。

でも、朝起きたら、リビングのエアコンを付ける前に暫く窓を開けて換気することにしている。

蝉の声が、凄い。


自然派だった主人は、生前殆どエアコンを使わなかった。

太陽の下で、いっぱい汗をかいて、運動もして、夜は美味しくビールを飲む、というのが日常だった。

職場でも、主人の部屋の窓は、いつも開いていたらしい。

教えていた大学では、エアコンは使わず、ジョギングまでする、ファンの様な学生さんもいたという話を聞いた。


一方、北国育ちで、汗腺の少ない私は、あまり汗をかかないだけに、熱気が体内に蓄積される体質らしく、人一倍の暑がりである。

それでも、毎朝窓を開けていると、蝉の大合唱が聞こえてくるのは気持ちが良かった。


ゆっくりと朝食を取りながら、主人が「この種類の蝉は、朝しか鳴かないんだ・・」と、少年のように楽しそうな表情で教えてくれた。

幼い頃には、虫取りに興じていたのだろう。


主人が、仕事に出かけると、私はやっと自分の世界が始まったとばかり、エアコンのスイッチを入れる。

窓を閉めると、蝉の声は消えて、エアコンのモーター音が取って代わり、半日が過ぎていく。


主人が帰宅する時間が近づくと、私はエアコンを止めて、窓を開け、部屋中の空気を自然の温度へと、暖めておく。

更に、その頃から台所で、夕食の支度をするのだから、夕方の一時間くらいは、私にとっては我慢の一字である。

でも、主人のように運動をする事も無く、にもかかわらず、殆ど互角にビールを味わう事ができたのは、この夕食前の灼熱体験のお陰だったのだろうと思う。



今も窓を開けると相変わらず聞こえてくる、蝉の大合唱は、暑かった主人との生活を、毎朝思い出させてくれる。


現在の私は、独居老人となって、熱中症対策の世間の声に意を強くしつつ、文明の利器の恩恵に甘んじた生活をしているのだが・・。


そういえば、最後の夏、主治医の先生が「エアコンは必ず、使ってくださいね」と仰っていたのを思い出す。


エアコン嫌いで有名だった主人の噂を、何処かで耳にされたのかも知れない。

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