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敏洋’s 昭和の恋物語り

えそらごと  (二十三) 

2018年11月13日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「うわあ! プードルみたい」と貴子が言えば
「マシュマロですよ、食べたあい」と、口数の少なかった真理子が応じた。

ルームミラーから見える真理子の目がキラキラと輝いて見える。
窓から身を乗り出しそうな勢いでガラス面におでこを付けている。
2ドアの商用車であることが残念といった表情もまた見せていた。
助手席の貴子も気づいているようで、ご機嫌みたいよと彼に目配せをした。

 山の中腹を過ぎて樹木の間から市街地が見え始めると、そろそろ山頂に着く。
「あまり飛ばさないでね、ヒヤヒヤしたわ。
さっき、カーブに差し掛かった時なんか、もう少しでガードレールに当たるところだったわよ。
ホント、生きた心地がしなかったわ。
ねえ、真理子ちゃん」

 身振り手振りで後ろの真理子に話しかけ、同意を求めていた。
真理子は、さ程に感じていないようだったが「ええ、そうですね」と、短く答えていた。
確かに、助手席では恐怖心が倍加されるだろう。
そう言えば、途中から貴子のおしゃべりが止まっていた。

「ハイハイ、分かりました。
どうせ、上り坂ではスピードは出ません。
ご安心下さい」

 三人乗りの状態では、速度を上げたくとも上がらない。
ギアはセカンドのままでアクセルを目一杯に踏み込む。
エンジンの苦しむ声を聞きながら、(がんばってくれ)と祈るような気持ちで、坂を駆け上がっていく。

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